米経済誌「Fortune(フォーチュン)」は9日、米大手暗号資産(仮想通貨)取引所の「Coinbase(コインベース)」と、決済大手の「Mastercard(マスターカード)」が、ステーブルコイン関連スタートアップ「BVNK」の買収を巡り、交渉が進んでいると報じた。
買収額は最大25億ドル、コインベースが優勢か
2021年に設立されたBVNKは、企業がステーブルコインを顧客取引、国際送金、財務管理などに活用するためのインフラを提供するフィンテック企業である。
昨年12月には、VCの「Haun Ventures(ホーン・ベンチャーズ)」が主導する資金調達ラウンドで5,000万ドルを調達し、その際の評価額は約7.5億ドルだった。このラウンドにはコインベースのベンチャー部門である「Coinbase Ventures(コインベース・ベンチャーズ)」のほか、「Tiger Global(タイガーグローバル)」、「Visa(ビザ)」、「Citi(シティ)」らのベンチャー部門も参加しており、その将来性が高く評価されていた。
フォーチュン誌は、この買収交渉に詳しい6人の情報筋による話を報じている。それによると、買収額は15億ドルから25億ドルの範囲で協議されており、最終的な条件や買い手はまだ確定していないという。しかし、情報筋のうち3人は、現時点ではマスターカードよりもコインベースが交渉で優位に立っていると語っている。
もしこの取引が成立すれば、ステーブルコイン関連の買収としては過去最大規模となる。
ステーブルコインは、2025年に入ってから特に注目される分野の一つとなっている。ステーブルコイン大手「Circle(サークル)」が6月に新規株式公開(IPO)で成功を収め、7月にはトランプ大統領がステーブルコインの規制枠組みを定める「Genius法(ジーニアス法)」に署名するなど、市場環境には追い風が吹いている。
暗号資産業界大手のコインベースと、既存金融業界大手のマスターカードが競合するこの買収報道も、ステーブルコイン分野への注目度の高さを示す証左と言えるだろう。
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