※本記事はドイツ銀行リサーチ研究所のレポート内容に基づく。価格・政策情報は同レポート作成時点のデータ。
ドイツ銀行リサーチ研究所は22日、2030年までに多くの中央銀行がビットコインを金と並ぶ公式準備資産として採用するとの予測レポートを発表した。2025年に金が1オンス3,703ドルの史上最高値、ビットコインも8月に12万3,500ドルの過去最高を記録する中、両資産の「安全資産としての共存」が現実的になるとの見解を示した。
現状の価格動向と制度採用
2025年は両資産にとって「卓越した年」となっており、金は地政学的不確実性とFRB利下げ期待を背景に40%上昇。一方ビットコインは機関投資家の採用拡大により年初から75%上昇し、現在11万3,000~11万8,000ドルで推移している。同行は年末までに12万ドル台回復を予想。
制度面では米国のトランプ政権が3月に国家ビットコイン戦略備蓄を決定し、押収分20万7,000BTCに加えて100万BTC追加購入プログラム(供給量の約5%)を提案。20年間の保有義務も設定し、州レベルではテキサス、アリゾナ、ニューハンプシャーが公的準備として採用済み。
各国の保有状況
エルサルバドルは2021年から法定通貨として採用し、2025年4月時点で6,246BTC(約7億ドル相当)を保有。ウクライナは戦争勃発後4万6,351BTCを蓄積し、ブータンも1万565BTCを保有している。一方、米国、中国、英国はそれぞれ19万8,012BTC、19万4,000BTC、6万1,245BTCを犯罪捜査で押収した形で保有。
世界の中央銀行金準備は3万6,359トンで、2025年の調査では43%の中央銀行が自国の金準備増加、95%が世界全体での増加を予想している。最大保有国は米国(8,133トン)、ドイツ(3,350トン)が上位。
2030年予測と共存理論
同行は両資産が「補完的な分散化手段」として機能すると分析。①他資産との低い相関性、②希少な供給、③インフレ・地政学リスクのヘッジ機能を共通点として挙げ、ビットコインのボラティリティも規制整備で低下傾向にあると指摘した。
ドル基軸通貨体制は継続するものの、ドルシェアは2000年の60%から2024年43%まで低下し、「デ・ドル化」が両資産への需要を押し上げている。同行は「金とビットコインは中長期的に共存し、2030年までに多くの中央銀行の公式準備バランスシートに並んで記載される」と結論している。