ビットコインをめぐり、Ordinals(オーディナルズ)やRunes(ルーンズ)の扱いについての論争が再燃している。一部では「JPEG戦争」と比喩的に呼ばれるこの対立では、開発者やインフルエンサーの間で見解が衝突。コミュニティ全体を巻き込んだ議論に発展しており、設計思想そのものを問い直す局面となっている。
高騰する手数料と利用制限への懸念
ビットコイン関連技術の開発企業「Blockstream(ブロックストリーム)」の共同創業者兼CEO、アダム・バック氏は5日、公式X(旧Twitter)で、オーディナルズによるブロックスペースの占有を「スパム的な使い方」と強く批判した。
「JPEGをチェーンに載せることは無駄で、手数料高騰や新規ユーザーの参入障壁を生む」と指摘し、マイナーも短期的な利益のために過度に受け入れるべきではないとの考えを示した。
これに翌6日、オーディナルズ推進派インフルエンサーのLeonidas氏がXで反論。「Bitcoin Core(ビットコイン・コア)がオーディナルズやルーンズを検閲するなら、$DOG Army($DOGアーミー)がフォークを資金提供して維持する」と主張し、検閲そのものを強く否定した。
Leonidas氏は、オーディナルズやルーンズは日常的にビットコインを使う経済活動であり、数億ドル規模の手数料を支払ってきた正当な存在であると強調。また、過去2年間で20以上のビットコイン関連スタートアップが経済的に重要なノードを運営し、全取引の約半数をブロードキャストしてきたと指摘した。
こうしてコミュニティの意見は鋭く対立している。反対派は「オーディナルズは電子現金という設計思想を逸脱し、トラフィック逼迫と手数料高騰を招く」と主張する一方、擁護派は「手数料を払い、プロトコルの範囲内で利用している以上は正当な取引だ」と反論する。単なる技術論ではなく、価値観の衝突が背景にあるため、論争は容易に収束しそうにない。
一方で、ビットコインの自己管理ソリューション提供企業「Casa(カーサ)」の共同創業者兼最高セキュリティ責任者(CSO)、ジェイムソン・ロップ氏は6日のX投稿で冷静な立場を示した。「コアはリレー緩和を支持しているから心配はいらない」と述べ、過度な検閲懸念をやわらげる方向性を提示した。
今回の「JPEG戦争」は、2017年の「ブロックサイズ戦争」を想起させる。当時はブロックサイズを巡って「処理能力を拡大すべきか」「分散性を守るために制限を維持すべきか」が争点となり、最終的にビットコインキャッシュ(BCH)が誕生するハードフォークに至った。今回は「オーディナルズやルーンズを許容すべきか、それとも電子現金としての純粋性を守るために制限すべきか」という論点であり、性質は異なる。しかしどちらも「ビットコインは何のためのチェーンなのか」という根源的な問いを突きつけている点では共通している。
結局のところ、「JPEG戦争」は単なる口論ではなく、ビットコインの設計思想と将来像を問う試金石だ。今後、変化を選ぶにせよ現状維持を選ぶにせよ、広い合意が必要になる。投資家は短期的なノイズに惑わされず、ネットワークの方向性を決める合意形成のプロセスに注目する必要があるだろう。
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