北紡は資産運用に注力、イクヨは再エネ活用で採掘
日本企業が、暗号資産(仮想通貨)マイニング事業に本格参入する動きを強めている。30日、繊維事業を手がける「株式会社北紡(証券コード:3409)」と自動車部品メーカーの「株式会社イクヨ(証券コード:7273)」が、それぞれ仮想通貨マイニング分野への新規事業参入を発表した。
北紡、仮想通貨マイニングで新たな成長軸を模索
北紡は同日、香港の「THASH BIG DATA MANAGEMENT GROUP LIMITED(タッシュ・ビッグデータ・マネジメント・グループ、以下THASH社)」と共同で、仮想通貨マイニングおよび関連事業を担う新会社「株式会社Kitabo Crypto Solution(キタボー・クリプト・ソリューション、以下KCS)」を設立すると公表した。新会社は北紡が51%、THASH社が49%を出資し、2025年10月の設立を予定している。
KCSでは、マイニング機器の設計・製造・販売に加え、北米でのマイニング拠点構築を推進。THASH社の実績とそのパートナー企業のインフラ・電力ソリューションを活用し、低コストかつ持続可能なエネルギーによるマイニング事業を展開する。さらに、国内では廃油発電、海外ではバイオマス発電など、再生可能エネルギーを活用した環境配慮型のマイニング手法も検討していく方針である。
なおKCSでは、マイニング事業に加えて、「仮想通貨トレジャリー事業」および「RWA(Real World Asset)事業」にも取り組む計画である。トレジャリー事業では、仮想通貨の保有・採掘・売買・貸借を適切に組み合わせることで、資産価値の成長とリスク管理の両立を図る。また、RWA事業では、仮想通貨取引所との連携を通じて、実物資産のトークン化による新たな資産運用モデルの構築を目指している。
イクヨ、運用委託と再エネ活用で収益化図る
一方、イクヨも同日、取締役会で仮想通貨マイニング事業への参入を決議した。パートナーとして選定したのは、シンガポールの「YIMIAO TECH PTE. LTD.(イーミャオ・テックPTE、以下YIMIAO社)」。同社から最新鋭のビットコインマイニングマシン「Antminer S21+」1,400台を7,500万円で購入し、2025年9月1日からの稼働を予定している。
マシンの運用はYIMIAO社に委託され、月間約4枚のビットコイン採掘を目指す。さらにイクヨは、岡山および名古屋工場における太陽光発電と蓄電池システムの導入を皮切りに、再生可能エネルギーを活用した日本国内でのマイニング事業展開も進める。これにより、環境負荷の低い持続可能なビジネスモデルの構築を図るとしている。
北紡やイクヨのような日本の製造業系企業が、既存事業の枠を超えて仮想通貨分野に進出する動きは、産業の多様化を示す一例である。とりわけ、持続可能性と金融的視点を組み合わせた事業展開は、将来的に日本企業の新たな競争力につながる可能性がある。今後は、こうした異業種による参入が相互の知見を活かし、仮想通貨分野の発展に寄与していくことが期待される。
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