主要企業が牽引、グローバル化するBTC財務戦略
現在、米国を中心とした複数の企業による戦略的なビットコイン(BTC)購入が加速している。注目すべきはその購入規模の大きさと資金調達スキームを駆使した大胆な投資戦略、そして「ビットコインの財務資産化」が企業戦略の中心に据えられつつある点だ。
執筆現在の6月第4週においても、各国企業によるビットコインの購入や財務戦略の発表が相次いでいる。以下では、今週に発表された主要企業やその他企業のビットコイン購入動向についてまとめた。
ストラテジー:245 BTCの買い増しで保有量は592,345 BTCへ
米国のテクノロジー企業「ストラテジー(Strategy)」は、16日から22日にかけて合計245 BTCを購入。平均購入価格は105,856ドルとなり、同社のビットコイン保有量は合計592,345 BTCに達した。今回の購入資金は同社発行の永久優先株(STRKおよびSTRF)の売却により捻出。この株式発行スキームには依然として約6兆円の未消化枠が残っており、今後も同様の形でビットコインを継続取得する余地があるという。
メタプラネット:二度の買い増しで保有量は12,345 BTCへ
国内ではビットコインを軸に財務戦略を展開する「Metaplanet(メタプラネット)」が、23日に1,111 BTC(平均購入価格:100,996ドル)、26日には1,234 BTC(平均購入価格:108,000ドル)の購入を発表。保有量は合計で12,345 BTCとなった。株式の希薄化影響を加味した場合の1株あたりビットコイン保有量の変化率を示す「BTCイールド」は、26日時点で112.2%に上昇。また、株式希薄化の影響を除いたビットコイン増加数を示す「BTCゲイン」は4,538 BTCと続伸しており、同社の蓄積戦略が機能していることを示している。
プロキャップBTC:BTC購入加速で保有量を4,932 BTCへ拡大
米国では新たなプレイヤーも登場した。著名投資家アンソニー・ポンプリアーノ氏が設立した「ProCap BTC, LLC(プロキャップBTC)」は、23日に3,724 BTC(平均購入価格:103,785ドル)、25日に1,208 BTC(平均購入価格:105,977ドル)を取得。合計保有量は4,932 BTCとなった。同社は今後もバランスシートへ継続的にビットコインを組み入れていく方針を示しており、ストラテジーに追随する米国企業として注目を集めている。
ビットコイン購入を発表したその他企業
主要企業の大規模購入に加え、他の複数企業も今週中にビットコインの購入を発表した。以下はその一部企業とビットコイン購入量などを示したものだ。
企業名 | 取得日 | 購入量(BTC) | 平均購入価格(ドル) | 総保有量(BTC) |
---|---|---|---|---|
ヴォルツキャピタル(英国) | 6/24 | 10 | 104,621 | 10 |
スマーターウェブカンパニー(英国) | 6/24 | 196.90 | 103,290 | 543.52 |
ビットマックス(韓国) | 6/24 | 49.06 | 未公開 | 300.08 |
メガマトリックス(米国) | 6/25 | 12 | 105,554 | 12 |
ボールトベンチャーズ(英国) | 6/26 | 1.85606 | 107,755 | 2.07606 |
ビットコイントレジャリーキャピタル(スウェーデン) | 6/26 | 66 | 105,270 | 66 |
米国はもちろん、直近では英国企業によるビットコイン購入・財務戦略化も目立つ。各国企業のビットコイン保有量を確認できる「Bitcoin Treasuries(ビットコイントレジャリーズ)」によると、英国は米国・中国に次ぎ、 61,245 BTCで保有量第3位にランクインしている。暗号資産(仮想通貨)大国を目指す米国の背中を追いかける形で、国内企業によるビットコイン購入が加速している状況だ。
今後のビットコイン購入・財務戦略を発表する企業も
今週にはビットコイン購入予定を発表する企業も見られた。フランスの半導体企業「Sequans(シークアンス)」は23日、私募形式で総額約3億8,400万ドル(約554億円)を調達し、ビットコインを取得する計画を発表。半導体事業を継続する傍ら、同社はビットコイントレジャリー事業へも注力していく方針を示した。
さらに日本では、自動車用樹脂部品企業「イクヨ」が26日、7月1日より1年間にわたって毎月最大1億円分、年間で最大12億円分のビットコインを購入する計画を明かした。同社のこの方針決定の背景には、成長戦略および資産運用の多様化が目的にあるとされている。
今週の動向から見えてくるのは、ストラテジーを牽引した企業によるビットコイン購入の流れが、より多様な国・業種の企業に波及しているという点だ。特に株式や社債といった資本市場からの調達を起点に、財務戦略としてビットコインを取得する仕組みは新たな資産運用の手法として定着しつつある。
ビットコインが単なる投機対象ではなく、企業のバランスシートを強化し、株主価値を高めるための「戦略的資産」として認知拡大していることは明白だろう。他分野の企業におけるビットコイン購入や財務戦略等の発表が仮想通貨市場をさらに上へ押し上げる要因となるか、今後の展開に注目したい。
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