世界最大級の暗号資産(仮想通貨)取引所「Binance(バイナンス)」が、スペインの大手銀行「BBVA(バンコ・ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行)」と提携したことが明らかになった。8日、英ニュースメディア「Financial Times(フィナンシャル・タイムズ)」が詳しい情報筋の話をもとに報じている。
FTX破綻を教訓に資産保護と信頼性を強化
この提携の背景には、投資家の資産保護に対する意識の高まりがある。そのきっかけとなったのが、2022年後半に起きた仮想通貨取引所「FTX(エフティーエックス)」の破綻だ。このニュースは市場に大きな衝撃を与え、投資家に対して取引所へ資産を預けることへのリスクや不安を植え付ける要因となった。バイナンスはこうした投資家の懸念に対応するため、BBVAとの提携に至った形だ。
今回の提携により、BBVAはバイナンスの顧客資産を管理する独立したカストディアンとして機能する。顧客の資金は米国債としてBBVAに保管され、バイナンスはその米国債を取引の証拠金として受け入れるという。これにより、顧客資産と取引所の運営資金が厳格に分離され、FTX破綻のような事態を未然に防ぐ体制を整える形だ。
BBVAは国際的な知名度と高い信頼性を持つ銀行であり、ビットコイン(BTC)をはじめとした仮想通貨の取引や保管サービスを提供する先駆的な存在としても知られている。一方、バイナンスは過去にマネーロンダリング防止(AML)規制違反で巨額の罰金を科された経歴がある。信頼性の高い銀行との提携は顧客資産の安全性向上のみならず、同社にとって失った信用の回復にもつながるとみられる。
米大統領令への署名も後押しになったか?
今回の提携発表はタイミング的にも注目される動きだ。7日、ドナルド・トランプ米大統領は金融機関が不当な理由で顧客へのサービスを停止することを禁じる大統領令に署名。これまで仮想通貨業界で見られた不公正な慣行に対して、トランプ政権は終止符を打つ構えを見せた。
この大統領令の署名により、すべての米国民が公正に銀行サービスを利用できることが期待されている。BBVAは米国外の銀行ではあるが、市場の規制緩和的な動きが今回の提携に間接的な影響を与えた可能性は否定できない。
今回のバイナンスとBBVAの提携は、業界全体の安全性向上に向けた大きな一歩と言える。新たな大統領令の署名の影響もあり、今後仮想通貨関連企業による同様の動きが波及することも考えられるだろう。今後、業界トップの仮想通貨取引所と大手銀行のタッグが生み出す市場への影響に注目していきたい。
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