レイヤー1ブロックチェーンのAptos(アプトス)(
APT)は12日、取引の中身を暗号化したまま送れる「暗号化メンプール」をメインネットで稼働させたと発表した。実行前の取引をボットに読まれ、先回りの売買などに使われるMEV(最大抽出可能価値)への対策で、利用者が取引ごとに暗号化を選べる。アプトスは、新たな第三者を信頼する必要のない、プロトコルに組み込んだ初めての実装だとしている。
アプトスの暗号化メンプール、ブロック確定後に復号
アプトス財団のブログによると、利用者は取引の中身(呼び出す機能とその引数)を手元で暗号化して送る。暗号化の鍵は、バリデーター全体がエポックごとに共同で作る。ブロックの提案者は中身を見ないまま取引を並べ、ブロックが確定した後にバリデーターが共同で復号して実行する。
1人のバリデーターでは復号できず、ステークの3分の2の合意が必要となる。アプトスのブロックを作るのと同じ条件だ。送り手のアドレスと手数料は暗号化されず、取引のデータはブロックの確定後にオンチェーンに記録される。
新しい暗号方式により、50ノードでの試験では、ブロックあたりの遅れは約20ミリ秒だったという。アプトスのブロックは1秒未満で確定する。
アプトス向けのウォレット「Petra(ペトラ)」が、署名の画面で暗号化を選べるようにした。アプトス上の無期限先物取引所Decibel(デシベル)も、注文を実行まで非公開にするために使う予定だ。既存のスマートコントラクトは変更せずに使える。
アプトスは、他のMEV対策として、取引を平文で見るビルダーや非公開RPCを使う方式、TEE(信頼できる実行環境)を使う方式、チェーン外の委員会が復号する方式を挙げ、いずれも新たな第三者を信頼する必要があると説明している。
アプトスの暗号化メンプール、手数料は通常の2倍から
開発者向けのドキュメントによると、暗号化した取引のガス単価の最低額は、復号の作業をまかなうため、1単位あたり200 Octas(オクタス)と通常の2倍だ。下回る取引はサーバー側で拒否される。アプトスは3月に、ガバナンス投票を経て通常のガス料金を10倍に引き上げている。
キーレス・アカウントやアカウント抽象化を使うアカウントは、暗号化した取引に署名できない。暗号化した取引そのものは、送信前のシミュレーションを直接は行えない仕様だ。
仕様書のAIP-144は承認済み(Accepted)の状態にある。稼働の時点で毎秒1,000件を超える暗号化した取引を処理できると説明している。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2026年3月9日 | ZKSecurityが暗号化メンプールの安全性監査を受託 |
| 2026年8月25日 | ガバナンス投票の議案「暗号化メンプールの枠組みの初期化」が実行 |
| 2026年10月12日 | メインネットでの稼働を発表 |
ZKSecurityの監査は3段階に分けて実施された。確定前の暗号化した取引を誰も復号できないこと、他人の暗号化した取引を複製・再送・改ざんできないことなどを確認の対象とした。暗号化した取引の手数料の計算は、監査の対象外だった。
