スイス銀行協会(SBA)の主導のもと、「PostFinance(ポストファイナンス)」、「Sygnum Bank(シグナム銀行)」、「UBS(ユービーエス)」の大手銀行3行は16日、銀行預金をトークン化した「デポジットトークン」を用いた銀行間決済の実証実験(PoC)に成功したと発表した。
デポジットトークン決済は法的にも有効と確認
この実験は、パブリックブロックチェーンであるイーサリアム上で、法的に有効な機関間の決済を世界で初めて実現したものだ。
スイスの国内決済システムは「元々非常に効率的」だが、デジタル時代の新しいニーズに応えるには限界があり、特に従来のシステムでは以下のようなことが困難であったとされる。
- プログラム可能な決済:「もし商品が届いたら、代金を支払う」といった、特定の条件に基づいた支払いを自動化すること。
- ブロックチェーンとの連携:新しいデジタル資産と既存の決済システムをスムーズに連携させること。
これらの課題を解決する手段として今回用いられたのがデポジットトークンである。デポジットトークンとは、銀行が持つ顧客の預金を1対1の価値で裏付けし、ブロックチェーン上で扱えるようにしたデジタルトークンである。
デポジットトークンとスマートコントラクトを用いることによって、「特定の条件が満たされた場合にのみ支払いを実行する」といった自動化された取引が可能になり、リスクの最小化、効率性の向上、そして複雑な取引の高速化などが可能になる。これにより、証券取引の自動決済や、保険金の即時支払いなど、新たなデジタル金融サービスの道が開かれるという。
今回行われた実証実験では、以下の2つのユースケースがテストされた。
- デポジットトークンを用いた参加銀行の顧客間での支払い
- デポジットトークンとトークン化された資産を自動で交換する
この結果、パブリックブロックチェーン上で銀行間のデポジットトークンが技術的に問題なく機能し、かつスイスの法律上も有効な支払いとして成立することが確認された。
UBSのデジタル資産責任者であるクリストフ・プーア氏は、「この実証実験は、パブリックブロックチェーンを介した銀行マネーの相互運用性が現実のものとなり、トークン化資産を巡るイノベーションを可能にすることを示すものだ」と述べた。
この取り組みは、スイス金融センターの革新的な可能性を示すとともに、将来のデジタル決済普及に向けた大きな一歩を踏み出したものだ。既存金融システムとブロックチェーン上のデジタル資産のさらなる相互運用性向上に期待したい。
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