米資産運用会社パラタクシス、ビットコイン財務戦略を掲げSPAC上場へ

木本 隆義
12 Min Read
画像はShutterstockのライセンス許諾により使用

米デジタル資産運用会社「Parataxis Holdings(パラタクシス・ホールディングス)」は6日、SPAC(特別買収目的会社)である「SilverBox Corp IV(シルバーボックス・コープIV)」と最終的な経営統合契約を締結し、ニューヨーク証券取引所(NYSE)への上場を目指すと発表した。

最大6.4億ドル調達、ビットコイン購入と韓国展開へ

合併後の新会社名は、存続会社の「Parataxis Holdings Inc.(ティッカー:PRTX)」。この動きは、単なる企業の株式公開ではない。暗号資産(仮想通貨)、とりわけビットコインを企業の主要な財務資産として組み込むという、先進的な財務戦略を公の市場で展開する計画の幕開けである。

パラタクシスは、最近よくある「ビットコインを保有する企業」にはとどまらない。同社のウリは、機関投資家向けの資産運用で培ったノウハウを活かし、ビットコイン保有から得られるリターンを最大化するという、「利回り強化戦略」にある。これは、ボラティリティの低いトレーディング活動などを通じて、ビットコイン資産から安定した収益を生み出すというもの。仮想通貨を「守りながら増やす」という、ほんとにできたらすごい、洗練されたアプローチである。

今回の発表に先立つこと約2ヶ月、6月20日、同社はすでに布石を打っていた。韓国のKOSDAQ上場企業である「Bridge Biotherapeutics(ブリッジ・バイオセラピューティクス)」との提携を発表し、韓国市場でのビットコイン財務戦略の開始を宣言したのだ。直後、ブリッジ社の株価は約4.5倍に高騰している。この事実は、パラタクシスの戦略に対する市場の熱狂的な歓迎ぶりを物語っている。

ではなぜ、他ならぬ韓国なのか? 韓国は仮想通貨取引が文化的に根付いており、規制当局の支援も厚い巨大市場だ。ところが、米国などとは異なり、いまだにビットコインの現物ETF(上場投資信託)が存在しない。この「空白地帯」こそ、パラタクシスにとっては大きなビジネスチャンスとなる。同社は、韓国市場における先行者として、その地位を先制奪取するねらいだ。

このSPAC上場により、パラタクシスは最大で約6億4,000万ドル(約944億円)の総収入を得る可能性がある。その一部である3,100万ドルは、すでにビットコイン購入資金として即時投入されることが決まっている。潤沢な資金を背景に、米国および韓国市場でビットコインの保有を加速させ、さらなる投資機会を探っていく方針という。

パラタクシス・ホールディングスの創業者兼CEOであるエドワード・チン氏は、「(今回の合併により)我々はビジョン実現にまた一歩近づく。それは、規律ある機関投資家向けプラットフォームを通じて、ビットコインへの差別化されたエクスポージャーを提供する上場企業を創り上げるというビジョンだ」と力強く語る。一方、合併相手であるシルバーボックス・コープIVの共同経営パートナー、ジョー・リース氏も「パラタクシスが持つユニークで拡張性の高いプラットフォームを公開市場に提供できることを誇りに思う」と応じ、両社の蜜月ぶりをうかがわせた。

この合併計画は、今後、米証券取引委員会(SEC)への登録届出書の提出と審査、そして両社の株主による承認を経て、正式に実行されることになる。仮想通貨というデジタル時代の寵児が、伝統的な金融市場のど真ん中でどのようなパフォーマンスを見せるのか。ウォール街の住人たちも、「新参者」の動向に注目している。

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※金額は執筆時点でのレート換算(1ドル=147.50円)

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リージョナルスペシャリスト(SEA)。仮想通貨歴は10年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。『月刊くたばれ経済学』『月刊くたばれMBA』編集長。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。来タイ13年。
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