Web3やブロックチェーン技術を活用し、地域課題の解決や魅力の発信につなげるプロジェクトが全国で広がりを見せています。「JR東海グループ」と「株式会社paramita(パラミタ)」による「ずらし旅 × エシカル特典」では、NFT(非代替性トークン)技術を使ったデジタルアートを通じて、旅と地域貢献を結びつける新たな試みが始まりました。
このプロジェクトの舞台は?

今回のプロジェクトは、豊かな自然と文化が息づく静岡県浜松市天竜区水窪町と三重県尾鷲市を舞台に展開されています。どちらの地域も高齢化や人口減少といった課題を抱えており、地域の経済や暮らしを支える持続的な活力の確保が課題となっています。
「ずらし旅」では、こうした地域と旅行者をNFTを通じてつなぐ仕組みが導入され、旅をきっかけに関係人口の創出を目指しています。
静岡県浜松市天竜区水窪町(みさくぼちょう)
静岡県最北端、長野県との県境に位置する山間の町で、面積の約96%を森林が占めます。古くは宿場町として栄え、重要無形民俗文化財「西浦の田楽」などの伝統が今も息づいています。
三重県尾鷲市(おわせし)
紀伊半島の南東部、熊野古道伊勢路が通る港町です。日本有数の多雨地帯として知られ、「尾鷲ヒノキ」の産地としても有名です。漁業や林業が盛んな一方で、担い手不足が課題となっています。
このプロジェクトに関わる企業とは?
このプロジェクトは、異なる分野で地域と関わってきた企業同士の連携によって実現しています。
株式会社paramita(パラミタ)

東京都新宿区に本社を構え、「持続可能な地域づくり」をテーマに、地域住民や企業、関係人口が協働する共助型の仕組み「Local Coop(ローカルコープ)」を推進しています。
また、ブロックチェーン技術を活用したNFTプロジェクト「SINRA(シンラ)」を展開。今回の「エシカル特典」では、地域の風景や想いを表現したデジタルアートを通じ、旅と地域貢献をつなぐ役割を担っています。
JR東海グループ

東海道新幹線を運行するJR東海グループは、地域との新たな関係づくりを目指して、共創プラットフォーム「conomichi(コノミチ)」を展開しています。
「ずらし旅」はその一環として、地域の魅力を伝えるとともに、関係人口の創出や継続的な地域支援につなげることを目的としています。
「ずらし旅 × エシカル特典」とは?

「ずらし旅 × エシカル特典」は、混雑を避けたお得な新幹線旅に、地域支援の仕組みを組み込んだ取り組みです。
旅行者がこの特典を選ぶことで、旅行代金の一部が水窪町と尾鷲市の支援に活用され、地域をモチーフにしたNFTデジタルアートが贈られます。
旅の体験を通じて地域に関わる、そんな新しいかたちの貢献を目指す仕組みです。
このプロジェクトの仕組みは?

エシカル特典付きの「ずらし旅」は、提携旅行会社のサイトから簡単に予約可能です。旅行者は以下のステップで参加します。
- 「ずらし旅」を購入
新幹線の往復チケットと体験クーポンがセットになった「ずらし旅」プランを、各旅行会社のサイトで購入します。 - 「エシカル特典」を選択
体験クーポンの中から「エシカル特典」を選ぶと、旅行代金の一部が水窪町と尾鷲市の地域支援に活用されます。 - NFTデジタルアートを受け取る
地域の風景や文化をモチーフにしたデジタルアートが、NFT形式で贈られます。NFTとは、デジタルデータに固有の価値と所有権を持たせる技術で、作品が唯一無二であることを証明できます。
作品は、地域の空気感や想いをユーモラスに描くアーティスト・おぐまこうき氏が制作。NFTはparamitaが運営する「SINRA」を通じて受け取れます。
このNFTが、将来的に地域イベントやフィールドワークの参加チケットとして使われる可能性もあります。
今後の展望と可能性
「エシカル特典」で集まった支援金の活用状況や地域の取り組みは、JR東海グループが運営する「conomichi」上で順次公開される予定です。
今後は、対象地域を他の沿線エリアへ広げる構想もあり、NFTを使った地域支援のモデルとしてさらなる展開が期待されています。
旅のあとも地域との関係が続くよう、NFTを活用した新たな体験や仕組みの可能性も模索されています。
おわりに
「ずらし旅 × エシカル特典」は、旅を通じて地域とゆるやかにつながる新しい選択肢です。NFTという技術を活かしながら、地域の風景や人々への敬意を形にするこの取り組みは、小さな旅の体験を、未来への支援へと変えていきます。