米オプション取引所のナスダックISEは13日、ブラックロックのビットコイン現物ETF「iShares Bitcoin Trust ETF(IBIT)」のオプション取引におけるポジション制限(建玉制限)を、現在の25万枚から100万枚へと大幅に引き上げる提案を米証券取引委員会(SEC)に提出した。同提案は26日に連邦官報で公示された。
制限引き上げの背景は「投資戦略の阻害」と「流動性提供への制約」
SECが公開した提出書類において、ナスダックISEは今回の提案の背景として、IBITオプションに対する需要が2025年に入ってから継続的に増加していることを挙げている。
同取引所は現状の25万枚という制限について、「投資家の取引活動や戦略、例えば効果的なヘッジ手段の利用やインカムを生み出す戦略を阻害する」と指摘。さらに、「マーケットメーカーがIBITオプションにおいて、より狭いスプレッドで流動性のある市場を提供する能力」にも制約を与えかねないと懸念を示している。
その上で、「IBITオプションのポジション制限(および権利行使制限)を100万枚に引き上げることで、流動性プロバイダーがナスダックISEおよび他のオプション取引所に追加の流動性を提供できるようになる」と主張している。
制限緩和でもビットコイン市場への影響はほぼなし
ナスダックISEは、ポジション制限の主な目的が「原資産市場を操作したり混乱させたりするインセンティブを生み出す可能性のあるオプションポジションの構築を防ぐこと」にあるとしつつ、現在のIBITの市場規模と流動性を鑑みれば、制限緩和による市場操作のリスクは低いと分析している。
提出書類によると、2025年9月22日時点でのIBITの時価総額は約862億ドル(約13.5兆円)、直近6ヶ月の平均出来高(ADV)は約4,460万株に達している。
取引所は、「仮に100万枚のポジション制限のもとですべてのIBITオプションが行使されたとしても、ビットコイン市場全体には実質的に気づかれない程度の影響しかないだろう」と結論付けている。
具体的には、100万枚のオプションが行使された場合のリスク量はIBITの発行済み株式数の約7.4%に相当するが、これをビットコイン市場全体(時価総額約2.2兆ドル規模)と比較した場合、「全ビットコイン発行数の0.284%」に過ぎないというデータを提示。この分析により、「提案されている100万枚のポジション制限は、IBITの流動性を考慮すれば適切である」と論じている。
SECは、今回の提案が連邦官報に掲載されてから45日以内に、承認するか、不承認とするか、あるいは審査機関の延長手続きを開始するかを決定する(最大90日まで延長可能)。
もしこの提案が承認されれば、市場参加者はより柔軟かつ大規模なポジション構築が可能となり、ビットコインETFオプション市場の流動性と厚みがさらに増すことが予想される。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=156.12円)




