サム・バンクマン=フリード、SNSで「弁護士乗っ取り」主張拡散──極右ブログが陰謀論的見解を支持

水澤 誉往
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※本記事のSBF側の主張は、バンクマン=フリードとそのチームが作成した文書「FTX: Where Did The Money Go?」(2025年9月30日付)に基づいています。同文書は破産裁判所文書や報道記事を引用していますが、有罪判決を受けた被告側の一方的な主張であり、破産管財人や検察の見解とは異なります。

詐欺罪で禁錮25年の判決を受けたFTX創業者サム・バンクマン=フリード(SBF)とそのチームが公開した文書「FTX: Where Did The Money Go?」が、X(旧ツイッター)上で議論を呼んでいる。陰謀論的金融見解で知られる極右リバタリアンブログ「ゼロヘッジ」が「SBFは身代わり」との見解を投稿し、29万件超の表示を記録した。

ただし、これらは有罪判決を受けた被告と偏向的メディアによる一方的な主張であり、破産管財人や検察の公式見解、裁判所判決とは正反対の内容となっている。現時点で、主要な金融メディアや専門家による支持は確認されていない。

極右ブログが「身代わり説」を拡散

ゼロヘッジは、ウィキペディアでは「極右・リバタリアン系の金融ブログ」と紹介され、陰謀論的金融見解や偏向的報道で議論を呼んできた。2020年にはツイッターから67万フォロワーのアカウントを一時停止されたが、のちに解除された。2022年には米情報機関から「ロシアのプロパガンダを拡散した」と指摘された経緯もある。

「ゼロヘッジ」の筆名投稿者「タイラー・ダーデン」は30日、「これが、暴落当日にSBFが『資金はすべてまだある』と言い張っていた理由だ。彼はただの替え玉にすぎない。真の“トロイの木馬”は、いまも内部に潜んでいる」と投稿し、約29万件の表示を記録した。

この「身代わり説」は客観的な裏付けに欠けるものの、X上では広く共有されている。

同投稿は、HB Li(@HBLi17)という別のアカウントによる10月29日の投稿を引用している。HB Li氏の投稿は「SBFの主張」として、FTX文書の内容を要約。「資金は一度も失われていない。実際、認められたFTX顧客請求の98%はすでに利息付きで全額返済されている」と述べ、破産弁護士がFTXを乗っ取らなければ、すべての顧客に現物で返済できたと主張している。

SBF本人のアカウント(@SBF_FTX)も10月31日に「資金の行方を示した」として同文書へのリンクを投稿した。

バンクマン=フリード側の主張

2025年9月30日付の文書によると、FTXは2022年11月の破産申請時点で約150億ドルの資産を保有しており、顧客への債務84億ドルを上回っていたとされる。文書は「FTXは一度も債務超過に陥っていない」と主張する。

同文書は、FTXが直面していたのは「流動性危機」であり、2022年11月末までに解決する見込みだったと述べている。顧客の出金要求に対し、FTXは11月6日に約10億ドル、7日に約40億ドルを支払い済みで、残る80億ドルの資金調達も進行中だったという。

文書の核心的主張は、法律事務所サリバン・アンド・クロムウェル(S&C)がFTXを不当に「乗っ取った」というものだ。文書によれば、S&CはFTX USの幹部を通じて支配権を掌握し、バンクマン=フリードがまだS&Cの顧客だった2022年11月9日、彼の背後で連邦検察に通報したとされる。

支配権掌握から数時間後、破産管財人ジョン・J・レイ3世がFTXとアラメダ・リサーチを破産申請。その後、S&Cは破産手続きの弁護士として自らを選任したという。

文書は、FTXの2022年11月時点の資産ポートフォリオを現在の市場価格で評価すれば、総額約1,360億ドルの価値があったと主張。アンソロピック株式143億ドル、FTX株式664億ドル、ソラナトークン124億ドルなどを挙げている。

破産管財人がこれらの資産を市場価格を大きく下回る条件で売却したとし、破産手続きの弁護士・コンサルタント報酬として9億4,800万ドルが支払われたことも批判している。

実際の返済状況と債権者の動き

実際の破産手続きでは、顧客は申請日の米ドル価値(119%~143%)で返済を受けている。2024年10月に裁判所が承認した破産計画によると、約98%の債権者に対し119%の返済が承認され、一部の債権者は最大143%を受け取る見込み。84億ドルの請求支払いと10億ドルの弁護士費用を支払った後も、財団には推定80億ドルが残っているとされる。

HB Li氏の投稿によれば、破産弁護士は49カ国の顧客への返済を保留する申し立てを行ったが、先週、新しい判事がこの申し立てを却下。「まだ時期尚早」との理由だった。HB Li氏の投稿は、中国人債権者の一人「Will的折腾纪」の発言として「これは始まりであり、終わりではない。すべての債権者が支払いを受けるまで、我々は圧力をかけ続けなければならない」と引用している。

破産管財人と検察の公式見解

破産管財人ジョン・J・レイ3世は、破産手続き開始時から一貫してSBFの主張とは正反対の見解を示してきた。レイ氏は2022年11月の議会証言および2023年1月の破産裁判所文書で「我々は80億ドルの顧客資金を失った」と明言し、FTXを「ゴミ箱の火事(dumpster fire)」と表現。同社を「経験不足で未熟な個人の小集団によって支配されていた」「サム・バンクマン=フリードの個人的領地として運営されていた」と厳しく批判している。

バンクマン=フリードは2024年に詐欺罪、共謀罪、マネーロンダリング罪で有罪判決を受け、禁錮25年の刑を言い渡された。判決は現在も有効であり、彼の主張は控訴の一環として提出される可能性がある。

検察は刑事裁判で、2021年後半の時点でアラメダ・リサーチが「負債が資産を上回っている」と主張。文書はこれを「虚偽」と反論しているが、陪審員はバンクマン=フリードに有罪評決を下し、裁判所もこれを支持した。

バハマ司法長官は、破産管財人の声明について「数百万ドルの法務・コンサルタント報酬の見込みが、彼らの法的戦略と無節操な声明を動機づけている可能性がある」とコメントしているが、X上での「身代わり説」のような陰謀論的見解を支持する公式声明はない。

X上での議論は続いているが、裁判所の判決という法的事実は変わっていない。

※本記事のSBF側の主張は、バンクマン=フリードとそのチームが作成した文書「FTX: Where Did The Money Go?」(2025年9月30日付)に基づいています。同文書は破産裁判所文書や報道記事を引用していますが、有罪判決を受けた被告側の一方的な主張であり、破産管財人や検察の見解とは異なります。

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株式会社jaybe 代表取締役。香川県三豊市出身。2010年4月、株式会社一誠社入社。2011年よりFX取引を開始。2016年3月30日、bitFlyer代表取締役社長・加納裕三氏が出演する動画で仮想通貨に興味を持ち、 1BTC価格47,180円で0.02BTCを購入したことが仮想通貨投資の始まり。2017年11月、仮想通貨投資で身に付けた知識・経験を活かし、自身初のブログ「次男坊の仮想通貨な日」を立ち上げ。2018年4月、JinaCoinの前身である「ジナキャッシュ」開設。2019年10月、収益の安定化に成功し、株式会社一誠社を退職、個人事業主として独立。2020年6月、事業拡大に伴い、株式会社jaybe(法人番号:7470001018079)を創業。 2023年、メディアの名称を「JinaCoin」に変更。月間15万PVを超える仮想通貨情報メディアに成長させる。現在は仮想通貨投資を行う傍ら、仮想通貨の普及活動やマーケットリサーチ等を行なっている。2024年6月、一般社団法人 日本クリプトコイン協会の「暗号通貨認定アドバイザー」資格を取得。仮想通貨投資活動:現物保有・デリバティブ取引・DeFi運用・エアドロップ活動。好きな銘柄:ビットコイン。著書:海外FXのはじめ方完全ガイド。WEB取材:凄腕FXトレーダーへインタビュ ー!vol.8=TitanFX。趣味:投資全般・SEO・読書
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