英国の金融行動監督機構(FCA)は8日、一般投資家の暗号資産(仮想通貨)ETN(上場投資証券)の取引を解禁した。これにより、一般投資家は従来制限されていた暗号資産への間接的な投資手段を得ることになる。
完全自由化はまだ先、アクセスは国内上場のみ
FCAが今回取引を解禁したETNは、特定の指標の値動きと連動することを目指して設計された金融商品だ。証券取引所でリアルタイムに売買できる点はETF(上場投資信託)と同様だが、ETNは発行体である金融機関の信用力に基づく債券のため、裏付け資産を保有しない点では本質的な違いを持っている。
FCAは2021年1月、規制されていない暗号資産デリバティブおよびETNの個人顧客への販売やマーケティング等の禁止を発表。当時はボラティリティの高さや詐欺的商品への懸念が強く、投資家保護の観点から厳格な規制が敷かれていた。しかし、ここ4年間における市場の成熟が進み、商品理解も深まったことを背景に、FCAは今回の規制緩和に踏み切ったと説明している。
ただし、取引の解禁は無制限ではない。一般投資家がアクセスできる暗号資産ETNは、FCAに承認された国内の投資取引所で取り扱われるものに限定されている。グローバル市場に展開する暗号資産ETNへのアクセスについては、市場動向を考慮して、今後段階的に制限解除されていく可能性が考えられる。
なお、暗号資産デリバティブに対しては依然として禁止措置が継続中となっている。暗号資産市場のボラティリティや透明性の課題が完全に拭いきれない中で、FCAは引き続き慎重な姿勢を維持していく構えだ。
今回の措置は、英国における暗号資産投資の新たな転換点となる可能性がある。一般投資家にとっては選択肢の拡大を意味し、資産運用企業にとっては新しい市場機会の創出にもつながる。FCAの判断が今後、英国内における高リスク金融商品の位置づけや暗号資産市場の発展にどのような影響を与えるかが注目を集めそうだ。
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