大手暗号資産(仮想通貨)取引所「Coinbase(コインベース)」は10日に発表した9月の月次見通しレポートで、「仮想通貨の強気相場は2025年第4四半期序盤まで続く可能性がある」との見解を示した。堅調な資金流動性やマクロ経済の追い風、そして支援的な規制の動きが市場を支えると指摘している。
季節性アノマリーを否定、市場を支えるDAT需要に注目
レポートはまず、仮想通貨業界で長らく語られてきた「9月はビットコイン価格が下落する/10月は価格が上がる」といった季節性アノマリー(経験則)に言及。2017年から2022年までの6年間、ビットコインが9月に下落を続けたといった歴史的な事実を引用しつつも、サンプル数の少なさや結果のばらつきを理由に、「月ごとの季節性は、ビットコインにとって特に有用な取引シグナルではない」と結論付けた。

季節性アノマリーを否定した上で、コインベースは「第4四半期の市場に対して建設的な見通しを維持している」とした。その主な理由は以下の通りだ。
- 金融緩和への期待:米国の労働市場が弱さを見せていることから、米連邦準備理事会(FRB)が9月17日と10月29日の会合で利下げに踏み切ると予想。これにより、現在マネー・マーケット・ファンド(MMF)などに滞留している7.4兆ドル(約1,090兆円)もの待機資金の一部が、仮想通貨市場に流入する可能性があるとした。
- DATによる継続的な買い:後述するデジタル資産トレジャリー(DAT)からの技術的な需要が、引き続き市場を強力に下支えすると分析している。
レポートは、現在の市場を理解する上でより重要な問いは「『デジタル資産トレジャリー(DAT)』サイクルの初期段階にいるのか、それとも後期段階にいるのか」であると指摘する。DATとは、「Strategy(ストラテジー)」のように、企業の財務資産として仮想通貨を保有する戦略、またその企業自体を指す。
現在、上場DATが保有する資産は、ビットコインだけでも100万BTCを超え、流通供給量の約5%を占める規模にまで成長している。
そのうえでコインベースは、このDATのサイクルについて、「もはや初期の採用段階ではないが、終わりに近いとも考えていない」とし、現在は「プレイヤー対プレイヤー(PvP)」の段階に入ったと分析。これは、単に先行者の戦略を模倣するだけでは成功できず、実行力や差別化、タイミングが重要となる競争の激しいフェーズを意味する。
このPvP段階では、より小規模なDAT間の統合が進む前兆であるとしつつも、競争が続くことで、ビットコインやイーサリアムといった主要な仮想通貨への資金流入は継続すると分析した。
コインベースのレポートは、季節性アノマリーのように広く話題になる情報が必ずしも有用とは限らないことを示している。さまざまな情報が渦巻くなかでも、投資家は正確で有意な情報を収集することを心がけるべきだということだろう。
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