暗号資産(仮想通貨)取引所「Coincheck(コインチェック)」を傘下に持つ「Coincheck Group N.V.(コインチェック・グループ)」は2日、機関投資家向けデジタル資産プライムブローカレッジ企業「Aplo(アプロ)」を買収する株式譲渡契約を締結したと発表した。取引完了は2025年10月を予定している。
初の海外買収で成長戦略を加速、B2B2C展開も視野
今回の契約に基づき、アプロの発行済み株式はすべてコインチェック・グループの新株に交換される。買収後、コインチェック・グループは欧州市場での事業基盤を強化し、機関投資家向けサービスの拡充を進める考えだ。
コインチェック・グループは、日本国外、とりわけ欧州での事業拡大を重要戦略に掲げている。今回の買収はその第一歩と位置づけられており、アプロの技術力や規制遵守の実績を活かすことで、事業を補完・強化し、国際展開を後押しする狙いがある。
アプロは2019年にパリで設立され、アルゴリズム取引や深い流動性へのアクセスを可能にする独自の取引基盤を構築してきた。フランス金融市場庁(AMF)に登録済みであり、現在は欧州連合の暗号資産規制(MiCA)に基づく正式ライセンス取得を進めている。
同社は設立以降成長を遂げ、現在はヘッジファンド、資産運用会社、銀行、大企業など60社以上の機関投資家を顧客に持つ。2025年には「Prime Broker of the Year(EMEA)」を受賞するなど評価を高めており、今回の買収後も創業者が事業を推進する予定だ。
今回の統合により、両社は以下の分野で事業拡大を図る。
- クロスマージンや決済延期といった資金効率を高めるための金融ソリューションの提供
- 複数の法域や新たな機関投資家への流動性アクセスと商品ラインナップの拡充
- グローバル市場の需要に応える取引インフラの革新
- 銀行が自社顧客に仮想通貨取引サービスを提供できるB2B2Cモデルの展開
また、シナジーの一環として、アプロがコインチェックのアルトコイン取引に流動性を供給できる可能性についても検討が進められる。
仮想通貨市場において、個人投資家から機関投資家へと需要の軸足が移りつつある。アプロは欧州で機関投資家向けサービスを磨き上げてきた実績を持ち、その顧客基盤をコインチェック・グループが取り込む意義は大きい。今回の統合により、日本発の取引所グループが世界的な機関投資家市場で存在感を高める契機となり、国際競争力の強化につながるだろう。
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