ブロックチェーン・オラクルの大手「Chainlink(チェーンリンク)」は28日、米国商務省と提携し、米国政府のマクロ経済データをオンチェーンで配信する取り組みを開始した。この取り組みでは商務省傘下の経済分析局(BEA)が公表する「実質国内総生産(GDP)」「個人消費支出(PCE)物価指数」などの重要指標が、チェーンリンクのデータフィードを通じてブロックチェーン上に提供される。
GDPやPCEを含む指標が、10のブロックチェーンで利用可能に
オンチェーン化により、信頼性の高い経済データを分散型金融(DeFi)やデジタル資産市場で直接利用できるようになる。自動化された取引戦略やトークン化資産の新たな組成、リアルタイムの予測市場、透明性の高いダッシュボード、マクロ経済指標に基づくリスク管理など、多様な活用が見込まれている。
今回提供されるデータは、指標ごとに毎月または四半期ごとに更新される。当初はイーサリアム、アービトラム、アバランチなど10のブロックチェーンで利用可能となり、今後はユーザー需要に応じて対応ネットワークを拡大していく計画である。開発者はすでにチェーンリンクの公式ドキュメントを通じて統合を開始できる。
チェーンリンクは2025年に入り、米政府との連携を強化してきた。証券取引委員会(SEC)とは、ブローカーディーラーやトランスファーエージェンシーに関する規制適用の課題について協議を重ね、最終的にSECが解釈指針を公表する成果につながった。
また、SEC暗号資産(仮想通貨)タスクフォースとの議論では、チェーンリンクACEによるオンチェーン・コンプライアンス対応の重要性を強調している。さらに共同創業者のセルゲイ・ナザロフ氏は、上院銀行委員会のティム・スコット委員長と仮想通貨構造法案について意見交換を行った。
ホワイトハウスも7月に発表した大統領作業部会の報告書で、チェーンリンクを安定コインやトークン化資産を支える重要インフラと位置付けた。この報告書は、オラクル基盤が仮想通貨の安全性や相互運用性を担保する上で不可欠であるとの認識を示しており、政策的な後押しが広がっている。
チェーンリンクはすでに2,400以上の統合事例を持ち、アーベやコンパウンドなど主要DeFiプロトコルを含む幅広いエコシステムを形成している。さらにスウィフト、ユーロクリア、UBSといった大手金融機関も採用を進めており、オラクル技術の標準としての地位を確立しつつある。今回の米商務省との提携は、同社が公共機関とブロックチェーン市場を結びつける重要な事例となりそうだ。
今回の発表は、従来の金融市場で利用されてきた経済指標を分散型金融の領域に直接結びつける試みであり、規制遵守と技術革新の両立を示すものといえる。信頼性の高い政府データがオンチェーンで活用可能になることは、米国におけるデジタル資産市場の発展にとって大きな意味を持つ。
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