ブラジル中央銀行は10日、暗号資産(仮想通貨)事業者に対する包括的な規制枠組みを確立した。同日公布された一連の決議(第519号、第520号、第521号)により、ブラジルは暗号資産市場を国家の金融システムの一部として明確に位置付け、透明性と安全性の向上を目指す方針を打ち出している。
銀行並みの管理要件、AML・顧客保護などを全面適用
新たな制度の中核となるのが、「暗号資産サービス提供会社(SPSAV)」の創設だ。SPSAVはカストディやブローカーといった事業内容に応じて分類され、すべて中央銀行の認可が必要となる。認可を受けた機関は銀行や証券会社と同様、マネーロンダリングやテロ資金供与対策(AML/CFT)、顧客保護、内部統制などの要件が課されることとなる。
さらに注目すべきは、国際資本取引における暗号資産の取り扱いだ。決議第521号により、暗号資産を用いた活動のうち、国際的な性質を持つものが正式に「為替市場取引」として定義された。具体的には、海外送金や支払い、法定通貨を用いた暗号資産の売買や交換などが為替規制の対象とみなされるようになる。
また、SPSAVが非認可機関を相手とする国際的な支払いの上限を10万ドル(約1,543万円)相当に制限するとしている。これらの新たな規則は2026年2月2日に発効する予定だ。なお、国際資本取引におけるSPSAVの取引情報提供も義務付けられる見通しとなっており、こちらは同年5月4日の発効が予定されている。
ブラジルでの規制枠組みの確立は、世界的な暗号資産市場の規制強化に伴う流れだ。日本国内でも、金融庁による投資家保護を強化するための規制の包括的な見直しが進められている。7日に行われた暗号資産ワーキング・グループでは、暗号資産を投資対象として明確に位置付け、規制の枠組みをより厳格化する方針を示している。
具体的には暗号資産を明確に投資対象と位置付け、発行者への情報開示義務や虚偽記載への課徴金制度の新設、レンディングサービスへの金融商品取引法の適用、不公正取引規制の新設などが検討されている。これまで法的に曖昧だった領域が、国内外で制度の中に組み込まれつつある状況だ。
ブラジルの新制度は、暗号資産を「金融インフラの一部」として正式に認めた点で画期的だ。市場の信頼性を高めると同時に、国際的な資金移動に対する監督体制を整えるこの取り組みは、今後の世界的な暗号資産規制の基準を左右する可能性があるだろう。
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