ボリビアの上院議員ロドリゴ・パス氏は19日、ホルヘ・キローガ元大統領を54.5%対45.5%で破り、次期大統領の椅子を勝ち取った。汚職と経済不安に直面する同国のかじ取りを担うパス次期大統領は、政府綱領「アジェンダ50/50」において、これらの課題に対処するための主要施策のひとつとして先進的なデジタル技術の活用を掲げている。
暗号資産を資金源に含む基金構想、外貨準備金の安定も視野に
ボリビアでは長年にわたり、公共事業の入札や契約手続きにおける汚職が深刻な社会問題となってきた。特に地方自治体レベルでは、同一企業が複数名義で入札を行ったり、契約書類を改ざんしたりするケースが相次いでいる。その結果、国家財政の無駄遣いや公共事業の質の低下が続き、政府に対する国民の信頼は大きく損なわれてきた。
こうした背景のもと、パス次期大統領の掲げる政府綱領では、公共調達プロセスでブロックチェーンとスマートコントラクトを導入する方針が示されている。裁量権を排除し、ブロックチェーンが持つ透明性とスマートコントラクトの契約履行を自動化することで、公共調達における恣意的な判断の余地をなくそうという狙いだ。
しかし、この先進的な制度導入には課題も少なくない。ブロックチェーン基盤を国全体で運用するためのインフラ整備はもちろん、これら技術の効力を法制度に組み込むことも不可欠だ。さらには、地方自治体における技術普及や人材育成、システム運用に関する教育の整備など、行政全体での対応力も問われることになる。
一方、経済面では外貨準備の減少が続き、為替不安とドル不足が顕著となっている。これを受け、政府綱領では新たに「為替安定基金」の創設が示された。この基金は国内外の資金流出を抑制し、為替の安定を図る目的で運用される予定だ。
注目すべきは、基金の資金源のひとつとして暗号資産(仮想通貨)が明記されている点である。これまで政府の管理下になかった暗号資産をはじめとした資産を国民に自己申告させることで、課税および基金への資金注入につなげる仕組みが想定されている。
パス次期大統領の構想は、ブロックチェーン技術による統治と経済再生を同時に進める意欲的な挑戦と言える。汚職撲滅と経済安定という2つの難題解決に向け、先進的な技術を武器にボリビアがどこまで前進できるかに注目していきたい。
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