米暗号資産(仮想通貨)運用大手のBitwise Investment Advisers(ビットワイズ)は26日、分散型オラクルネットワーク「Chainlink(チェーンリンク:LINK)」の現物ETFをSEC(米証券取引委員会)に申請した。承認されれば、米国初のチェーンリンク現物ETFとなり、投資家は従来型の証券口座を通じて間接的にチェーンリンクへ投資できるようになる。
チェーンリンク現物のみ保有、パッシブ運用方式採用
「Bitwise Chainlink ETF」は、現物のチェーンリンクトークン(LINK)のみを保有し、デリバティブ商品は使用しない設計。投資目的は「信託が保有するチェーンリンクの価値から運営費用等を差し引いた価値へのエクスポージャー提供」としている。
純資産価値(NAV)の算定には「CME CF Chainlink–Dollar Reference Rate – New York Variant」を採用。これは東部標準時午後4時時点でのチェーンリンクの米ドル価格を測定するベンチマーク指標で、コインベース、ビットスタンプ、ジェミナイ、クラーケンなど主要取引所の取引データを集約している。
パッシブ運用方式のため、価格上昇局面での利益確保や下落局面でのヘッジ戦略は実施せず、チェーンリンク市場の価格変動に直接連動する。
コインベース・カストディによる高度なセキュリティ体制
チェーンリンクトークンの保管は、ニューヨーク州金融サービス局から信託ライセンスを取得したコインベース・カストディ・トラスト・カンパニーが担当。多層コールドストレージシステムによりオフライン環境で秘密鍵を管理し、盗難やサイバー攻撃からの保護を図る。
保管システムには以下のセキュリティ機能を実装
- コールドストレージによる完全オフライン保管
- 複数層の暗号化による秘密鍵保護
- ホワイトリスト承認済みアドレスへの送金制限
- 全取引の監査証跡記録
- 顧客資産の分別管理体制
同社は民間保険会社による補償制度も完備しているが、FDIC(連邦預金保険公社)の対象外のため、政府保証はない。
高リスク商品として注意喚起を明記
SECへの申請書類では、投資リスクについて詳細な警告を記載。「投資元本の全額損失リスクを許容できない投資家には不適合」「投機的証券」として明確に位置づけている。
主要リスクとして以下を列挙
- チェーンリンク市場の極めて高いボラティリティ
- 暗号資産規制の不透明性(証券認定リスク含む)
- チェーンリンクネットワークの技術的障害やプロトコル変更
- 取引所の流動性不足や運営停止
- サイバー攻撃やハッキング被害
- ETF価格と現物価格の乖離リスク
分散型オラクル市場でトップシェア
チェーンリンクは、ブロックチェーン上のスマートコントラクトと外部データを安全に接続する「オラクル」サービスを提供する分散型ネットワーク。DeFi(分散型金融)、ゲーム、NFTなど幅広い用途で利用されており、8月26日時点で時価総額は仮想通貨全体で第11位の規模。
ノード運営者はサービス提供の対価としてLINKトークンを受け取り、不正行為には保有LINKの没収といったペナルティが課される仕組み。将来的にはネットワークガバナンスへの参加報酬としての用途も検討されている。
今回のETF申請により、機関投資家や個人投資家がより簡便にチェーンリンクエコシステムの成長に参加できる投資手段が提供される可能性がある。ただし、承認時期や上場取引所、正確な手数料率などの詳細は今後の発表を待つ必要がある。
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