暗号資産(仮想通貨)分析企業ギャラクシーリサーチは18日、米国政府によるビットコイン押収とその後の動向に関する分析レポートを公開した。
「戦略的ビットコイン準備金」が一夜にして64%増加
レポートは、米国司法省(DOJ)がカンボジアを拠点とする犯罪組織から押収した127,271 BTC(約150億ドル)に関する動向を詳細に分析したものだ。
事件は、カンボジアの複合企業プリンス・ホールディング・グループの会長であるチェン・ジー氏を中心とする大規模な犯罪シンジケートを対象としたものである。DOJの起訴状によると、同組織はオンラインギャンブル、強制労働施設、そして大規模な投資詐欺などを運営していたとされる。
検察は、チェン氏らが数十億ドルにのぼる不正な収益を、大規模な暗号資産マイニング事業を含むフロント企業を通じて資金洗浄していたと主張している。
2020年に発生したハッキング事件との関連
ギャラクシーリサーチの分析によると、今回押収された暗号資産は2020年に発生したハッキング事件と関連している可能性がある。
2020年、中国のマイニング企業ルービアンが、ウォレット生成ソフトウェアの脆弱性を突かれ、約127,000 BTCを何者かに盗まれるという大規模な秘密鍵漏洩事件に見舞われた。
そして今回、DOJの起訴状に記載されたウォレットリストと、2020年の事件で特定された脆弱なウォレットリストが完全に一致したという。さらに、押収された127,271 BTCは、チェン氏のウォレットではなく、2020年のハッキング犯のウォレットからほぼ全額が回収された。DOJは、チェン氏がこれらの鍵を保有していたと主張している。
この状況から、ギャラクシーリサーチは「プリンス・グループとルービアンは別々の組織ではなく、同一組織の異なる部門だった可能性が高い」と分析。2020年の「ハッキング」は、不正収益を隠蔽するための偽装工作であった可能性を指摘している。
米国は世界最大規模のビットコイン保有者に
今回の押収で最も注目すべき点は、そのビットコインの行き先である。
米政権は今年3月の大統領令により、財務省が押収したデジタル資産を売却せずに「戦略的ビットコイン準備金」の一部として保有することを許可している。
この新たな方針に基づき、今回押収された127,271 BTCは準備金に組み入れられる。そして、これにより、米政府の戦略的ビットコイン準備金は一夜にして64%増加。米国の金(ゴールド)備蓄の約3.5%に相当する規模に達した。
この結果、米政府は、マイケル・セイラー氏率いるストラテジーを除けば、単一の事業体として世界最大のビットコイン保有者の一つとなったという。
レポートは、本件について「アンクル・サム(=米国)はビットコインをロングしている」と表現している。同規模の押収が今後も行われていけば、将来的には米国政府が圧倒的なビットコイン保有者となるかもしれない。
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