暗号資産(仮想通貨)分析企業「Glassnode(グラスノード)」は10日、最新のオンチェーン分析レポートを公表し、ビットコイン市場の興味深い動向が浮き彫りになった。現在の市場は明らかにアキュムレーション(蓄積)が優勢となっており、大相場の前兆を示す複数のシグナルが観測されている。
小口投資家が月1.9万BTC蓄積、新規発行量を大幅に上回る
ビットコインは史上最高値を更新し116,000ドル(7月11日執筆時点)周辺を推移しており、投資家行動には明確な変化が起きている。

最も注目すべきは小口投資家の動向だ。100 BTC未満を保有する投資家グループ、いわゆるシュリンプ(1 BTC未満)、クラブ(1~10 BTC)、フィッシュ(10~100 BTC)が毎月19,300 BTCというペースで買い増しを続けている。これは月間新規発行量の13,400 BTCを6,000 BTC近くも上回る規模で、個人から富裕層まで幅広い投資家が新規供給を吸収している状況だ。
長期保有者(LTH)の蓄積ペースもマイナーへの新規BTC供給量を大きく上回っており、価格変動に動じない「ガチホ勢」が現在の水準では容易には手放さない傾向がみられる。

ボラティリティ異常圧縮で大相場の前兆、96%の取引日が高ボラティリティ
供給がジワジワと締まってくる中、市場は些細な需要変化にも敏感に反応するようになってきた。

過去数週間の実現ボラティリティを分析すると、かなり長期間にわたってボラティリティが収縮していることが明確に見てとれる。特に直近3カ月間のボラティリティは極めて低く、2022年12月以降の取引日のうち実に96%にあたる914日が、現在よりも高い水準のボラティリティを記録していた。
過去の経験則から言えば、こうしたボラティリティの異常な低下は「嵐の前の静けさ」と考えてよい。オプション市場でも同様の傾向が確認できており、アット・ザ・マネー・インプライド・ボラティリティは依然として低水準を維持している。
オンチェーンの実現供給密度メトリクスも注目に値する。現在、全流通量の約19%が現在価格の±10%圏内に密集している。市場がこの価格帯を抜け出した瞬間、連鎖的な反応が起きやすくなっている。
ETF資産残高137億ドルで過去最高、ブラックロックが97%独占の異常事態
米国のビットコイン現物ETF(上場投資信託)への資金流入は多少鈍化してきたものの、ETF全体の運用資産総額(AUM)は過去最高の1,370億ドルまで膨らんだ。これは世界のETFランキングでトップ10入りする水準だ。

個別ETFを詳しく見ると、「BlackRock(ブラックロック)」のIBIT(iShares Bitcoin Trust ETF)が一人勝ち状態を続けており、全体の55%という圧倒的なシェアを握っている。さらに驚くべきは、オプション市場では97%という驚異的な占有率を誇っている点である。
- IBIT:420万契約(97%)
- FBTC:8万1,000契約
- BITB:1万5,000契約
大きな資金と取引量が集中することでマーケットメイカーが集まり、スプレッドが狭くなって取引コストが下がるという好循環が生まれている。
ブラックロックのETF預金コストベース(75,300ドル)は、市場全体の平均的なコストベース(72,200ドル〜78,400ドル)と非常に近い水準で推移しており、ETFの影響力がビットコイン市場で急速に拡大していることを示唆している。
転換点に差し掛かる市場、次の大相場への期待高まる
これらの材料を総合すると、ビットコイン市場は重要な局面に差し掛かっている。長期保有者も小口投資家も買い集めを加速させ、供給不足が深刻化する一方で、ボラティリティはかつてないほど抑制されている。
月間19,300 BTCという蓄積ペースは新規発行量を大幅に上回っており、参加者の「まだまだ安い」という強気な姿勢がにじみ出ている。次に来る大きな動きがどちら向きなのかは誰にもわからないが、その規模は相当なものになりそうだ。
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