ソラナ財団、カザフスタン政府とMOUを締結──中央アジアの技術拠点構築へ

木本 隆義
15 Min Read

先月末の「ソラナ経済特区」発足に続く動き

暗号資産(仮想通貨)Solana(ソラナ)の支援団体である「Solana Foundation(ソラナ財団)」は22日、中央アジアの資源国カザフスタンのデジタル開発イノベーション航空宇宙産業省(MDAI)との間で、包括的なMOU(覚書)を締結したと発表した。デジタル新時代のさらなる進展の兆候として、注目が集まっている。

この提携の主眼は、トークン化された資本市場の推進にある。それに加え、仮想通貨開発者の育成や、地域に拠点を置くソラナ関連スタートアップへのリソース提供も含まれるという。カザフスタンをソラナ経済圏における中央アジアのハブとして位置づけようとする構想がうかがえる。

この動きは唐突なものではない。むしろ周到に準備されたシナリオの第二幕と見るべきだ。先月30日、カザフスタン政府は首都アスタナで、中央アジア初となる「SEZ KZ(ソラナ経済特区)」の正式な発足が宣言された。ソラナ財団の支援を受け、政府高官や世界のWeb3専門家が一堂に会したこのイベントは、まさに国家の一大プロジェクトの式典であった。しかも、アスタナ国際フォーラム2025の前夜という絶好のタイミングを選んだあたりにも、カザフスタン当局らのしたたかな計算がうかがえる。

こうした特定技術にフォーカスした経済特区は、技術革新を加速させる強力な起爆剤となり得る。たとえば、ドバイのDMCC(複合商品センター)内に設置されたクリプトセンターは、有利な規制やインフラへのアクセスを提供することで、いまやブロックチェーン企業の集積地として世界にその名をとどろかせている。カザフスタンは、これらの成功モデルを参考にし、自国の戦略ビジョンに合わせて応用しようとしているのだろう。

同国のジャスラン・マディエフMDAI相は、「我われは強靭かつ競争力のあるデジタル環境の構築にコミットしている」と語る。そして、「ソラナ経済特区のようなプロジェクトは、資産のトークン化からWeb3人材の育成まで、次世代の解決策を試し、実装することを可能にする」と、その遠大な計画を隠さない。大臣の言葉からは、国家としてデジタル経済の主導権を握ろうとする強い意志が感じられる。

この特区構想は、決して単なるお題目ではない。発足を記念したサミットでは、エネルギーや金融、農業技術、ゲームに至るまで、多様な分野でブロックチェーンを活用する国際的なスタートアップのソリューションが披露された。さらに、証券や金、不動産といった実物資産のトークン化の可能性についても、活発な議論が交わされたという。

そして、このイベントのクライマックスとして署名されたのが、今回の発表につながる戦略的覚書であった。この覚書は、大きく分けて三つの柱から構成されている。

  1. 第一の柱は『トークン化された資本市場』の創設だ。これは、証券取引所「AIX」、ソラナ財団、そして仮想通貨プロジェクトの「Jupiter(ジュピター)」、「Intebix(インテビックス)」が参加する野心的なパイロット・イニシアチブである。トークン化された金融商品を、カザフスタンの既存の資本市場インフラにどう統合していくかを探るという。
  2. 第二の柱は『Web3人材の開発』である。ソラナ財団はMDAIと連携し、国内の大学やハイテクパーク「Astana Hub(アスタナ・ハブ)」を巻き込んで、ブロックチェーン開発言語「Rust(ラスト)」や関連技術に関する全国的な教育プログラムを立ち上げる計画だ。技術立国の基礎は、やはり「人」だった。
  3. そして第三の柱が『グローバルなWeb3企業の誘致』に他ならない。スタートアップ支援を手がける「Forma(フォーマ)」と協力し、海外の有望なWeb3企業をカザフスタンに呼び込むための専門的な支援プログラムを導入する。インフラへのアクセス提供はもちろん、規制面でのサポートやビジネス上の優遇措置も用意される。

カザフスタンはAIからブロックチェーンに至るまで、新興技術の強固な基盤を築くことに国運を賭けている。デジタル主権を確立し、持続可能な経済成長を実現するという国家目標を掲げているのだ。中央アジアにおける旧ソ連から独立した大国が、仮想通貨技術をテコにしてデジタル時代の覇権争いに名乗りを上げた。この壮大な社会実験がどのような結末を迎えるか? その行く末を注視したい。

関連:ソラナ財団、デリゲーション支援見直し──分散化促進へ新方針発表
関連:ソラナ特化アクセラレーター「コロシアム」、6,000万ドルのファンドを設立

仮想通貨の最新情報を逃さない!GoogleニュースでJinaCoinをフォロー!

Share This Article
Follow:
リージョナルスペシャリスト(SEA)。仮想通貨歴は10年。Liskで大損、BTCで爆益。タイの古都スコータイで、海外進出のための市場調査・戦略立案・翻訳の会社を経営。『月刊くたばれMBA』編集長。1973年生。東海中高、慶大商卒、NUCB-MBA修了。来タイ13年。
コメントはまだありません

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA