米国証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス議長は12日、暗号資産(仮想通貨)が証券(セキュリティ)であるかをめぐる長年の不確実性を解消するため、トークンを4つのカテゴリーに分類する新しい「トークン・タクソノミー(分類法)」を確立する構想を明らかにした。
旧来のSEC見解を批判、新ルールの構想を発表
アトキンス議長は、フィラデルフィア連邦準備銀行での講演において、SECの「プロジェクト・クリプト」の次なるステップを語った。
同氏は、「暗号資産(crypto assets)」は法的な定義ではなく技術的な説明をしている名称に過ぎないと指摘。これまでSECが示してきた「トークンが一度でも投資契約の対象となれば、それは永遠に証券である」という見解には「欠陥がある」と断じた。
同氏はこの旧来の見解が「持続可能でも実行可能でもない」とし、より明確なルールを持つ海外の管轄区へイノベーションを流出させる「破壊的な競争」を招いていると述べ、「(規制について今後は)明確な線を引き、それを明確な言葉で説明する」と宣言した。
また、アトキンス議長は、「現在取引されているほとんどのトークン(暗号資産)は、それ自体が証券ではないと信じている」と明言。証券法の中核である「Howey test」の解釈について、「資産そのもの(トークン)と、その販売方法(投資契約)を分離すべきである」という考えを示した。
4つの「トークン・タクソノミー」構想
アトキンス議長は、このアプローチに基づき、SECが今後数ヶ月で検討する「トークン・タクソノミー(分類法)」の4つの主要カテゴリーを提示した。この構想は、ヘスター・パース委員が率いる「クリプトタスクフォース」の先駆的な取り組みに基づいているという。
- デジタル・コモディティ(digital commodities)もしくはネットワーク・トークン(network tokens):機能的かつ分散化された暗号システムに固有のトークン。他者の経営努力による利益を期待するものではないため、「証券ではない」
- デジタル・コレクティブル(digital collectibles):アート、音楽、ゲーム内アイテム、ミームなど。購入者は他者の経営努力による利益を期待していないため、「証券ではない」
- デジタル・ツール(digital tools):会員権、チケット、認証情報、IDバッジなど、実用的な機能を持つもの。利益を期待していないため、「証券ではない」
- トークン化された証券(tokenized securities):暗号ネットワーク上で管理される、既存の「証券」の定義に該当する金融商品の所有権を表すもの。「証券であり、今後も証券であり続ける」
アトキンス議長は、このSECの新しいアプローチが、議会が進める包括的な暗号市場構造法案を「補完するものであり、取って代わるものではない」とし、「トランプ大統領の目標である、年末までの暗号市場構造法案の成立を支持する」と述べた。
アトキンス議長は、この構想が「SECの執行緩和を約束するものではない」、「詐欺は詐欺だ」と釘を指した。その上で、この新しい枠組みは「(法執行という)脅しではなく、明確なルールを提示する」ものであり、「投資契約が終了し、ネットワークが自立できることを認めるものだ」と締めくくった。
トランプ政権以前のアメリカでは、「ある暗号資産(トークン)が証券であるか否か」をSECが恣意的に判断しているとの批判の声もあったが、アトキンス議長のもと、今後はより明確なルールが定められることになりそうだ。
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