人気の分散型取引所(DEX)である「Hyperliquid(ハイパーリキッド)」が計画する、独自のネイティブステーブルコイン「USDH」の発行パートナーの座を巡り、大手ステーブルコイン発行企業らによる提案合戦が激化している。「Paxos(パクソス)」、「Frax Finance(フラックス・ファイナンス)」、そして「VanEck(ヴァンエック)」などが参加する「Agora(アゴラ)」連合といった有力候補が次々と名乗りを上げ、それぞれが自社の強みをアピールしている。
エコシステムの将来を左右する重要な選択、大手発行体が名乗り
この動きは、ハイパーリキッドの運営財団が5日、プロトコルが予約していた「USDH」というティッカーシンボルを、「コミュニティの投票によって選ばれた単一のチームに解放する」と発表したことに端を発する。
運営は「Discord(ディスコード)」の公式コミュニティで、「USDHティッカーは、ハイパーリキッドファーストで、ハイパーリキッドと連携した、コンプライアンス準拠の米ドルステーブルコインにふさわしい」とコメント。どのチームがUSDHの発行を担うかは、バリデータのオンチェーン投票によって決定されるとした。
この発表を受け、複数の有力チームがXやディスコードでUSDHに関する提案を投稿している。
パクソス:「GENIUS法準拠」と規制面の強みをアピール
ステーブルコインUSDPなどの発行で知られるパクソスは7日、「パクソスによるUSDH」と題した提案を提出。「GENIUS法(米国のステーブルコイン規制法案)に準拠したグローバルな発行」「HYPEトークンやプロトコル、バリデータに利益をもたらす収益分配」「ハイパーリキッドの爆発的な成長に見合う規制の明確さとグローバルな規模」を強みとして挙げた。規制準拠を軸にした安定的な運用能力を前面に出した形だ。
フラックス・ファイナンス:「コミュニティへの100%還元」を提案

分散型ステーブルコインFRAXなどで知られるフラックス・ファイナンスは、「ハイパーリキッドが築いた価値は、コミュニティ自身が享受すべきだ」とし、USDHの裏付け資産である米国債から得られる利回りの100%をコミュニティに還元するという大胆な提案を行った。
ディスコード投稿では「we’re not doing it for free(無料でやるわけではない)」と述べつつ、続けて「採用によって他の手段で利益を得る」と説明しており、USDHの利回りを取らない方針とエコシステム拡大を優先する姿勢を示した。
アゴラ:「世界クラスの連合」で機関投資家クラスのインフラを強調
アゴラのCEO兼共同創業者で、資産運用大手ヴァンエック創業者の息子でもあるニック・ヴァン・エック氏は、決済企業「Rain(レイン)」、相互運用性プロトコル「LayerZero(レイヤーゼロ)」と連合を組み、USDHのインフラを共同で提供する案を提示した。
この提案の最大の強みは、「機関投資家グレードのインフラ」だ。具体的には、総額49兆ドルの資産を管理する「State Street(ステート・ストリート)」が準備金の現金カストディアンを、1,300億ドル以上の資産を運用する「VanEck(ヴァンエック)」が資産運用を担当するとし、他の提案にはない圧倒的な信頼性と規模を強調。こちらも、純収益の100%をHYPEの買い戻しや支援基金に充てるとした。
どの提案が選ばれるかは、最終的にハイパーリキッドのバリデータによるオンチェーン投票で決定される。ハイパーリキッドの重要な決定は、コミュニティメンバーのみならず、Web3業界から広く注目を集めそうだ。
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