「一般社団法人 新経済連盟(JANE)」は10日、2026年度の税制改正に向けた提言を発表した。代表理事は「楽天グループ」創業者の三木谷浩史氏。この中で、暗号資産(仮想通貨)税制について、申告分離課税の導入や損失の繰越控除を認めることなど、4つの具体的な改正案を挙げている。
長年要望されてきた暗号資産税制改正への期待高まる
JANEは、イノベーション、アントレプレナーシップ、グローバリゼーションの3つを促進することで、日本の経済と社会の発展に貢献することを目的としている。
今回の提言書では、暗号資産税制に関する具体案が示された。JANEは、「現行規制や税制が足かせとなり、有望なWeb3企業が国外流出している」と現状の課題を指摘し、Web3ビジネスを振興する観点から、以下の4つの具体的な税制改正を提言した。
- 申告分離課税の導入と損失の繰越控除
現在、暗号資産取引で得た利益は、給与所得などと合算して課税される「総合課税」の対象であり、最大55%に達する。これに対し、株式投資などと同じように、他の所得とは分離して課税する「申告分離課税」(一般に約20%水準)への移行を求めており、さらに、年間の取引で生じた損失を翌年以降の利益と相殺できる「繰越控除」を認めるよう提言した。
- 相続税評価額の見直しと取得費特例の適用
暗号資産を相続する際の評価額について、現在の「相続開始日の時価」だけでなく、相続月を含む過去3ヶ月間の月平均時価のうち最も低い価額を選択できるように見直すべきだとした。また、相続した暗号資産を売却した際には、相続税額の一部を資産の取得費に加算して譲渡所得を計算できる「取得費の特例」の対象とすることも求めている。
- 暗号資産同士の交換時は非課税に
現行の税制では、ある暗号資産を別の暗号資産に交換した際にも、利益が出ていれば課税対象となる。これを、法定通貨(円など)に交換したタイミングでまとめて課税する方式に改めるべきだと提言した。
- 暗号資産による寄附を阻害しない税制へ
暗号資産を寄附する場合の税制について、所得税法や租税特別措置法の適用を整理し、寄附を阻害しない形に改正すべきだとした。
JANEは、これらの個別施策に加え、「税率を引き下げて日本経済活性化を促し、税収を増やして再び国内投資へ」という「税と成長の好循環」を実現することを、税制改正全体の基本的な考え方として掲げている。
暗号資産税制については、株式をはじめとした一般的な金融投資と同水準となるように、これまでも業界内外から改正を求める声が度々上がってきた。今回、JANEからも同様の提案がなされたことで、長年にわたって暗号資産業界が求めてきた税制改正に、進展があることを期待したい。
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