米大手暗号資産(仮想通貨)取引所コインベースは21日、オンチェーン資金調達プラットフォーム「Echo(エコー)」を約3億7,500万ドル(約570億円)で買収したと発表した。今回の買収で、コインベースはプロジェクトの立ち上げから資金調達、二次市場での取引までを一貫して支援できる体制を構築する。
トークン発行から二次市場まで一貫支援へ
エコーは、プロジェクトが自らのコミュニティから直接資金を集められるオンチェーン資金調達プラットフォームだ。暗号資産業界の著名人物コビー氏が設立し、初期投資をより多くの個人に開放する「投資の民主化」を掲げている。プライベートセールに加え、セルフホスト型のパブリックトークンセールを実施できるツール「Sonar(ソナー)」を提供している。
すでにエコーは約300件の案件を通じ、累計2億ドル(約304億円)以上の資金調達を支援してきた。特にソナーは、ステーブルコイン決済に特化したブロックチェーン「Plasma(プラズマ)」のXPLトークン販売を成功に導くなど、実績を積み重ねている。
コインベースの狙い――オンチェーン資本市場の再構築
コインベースがエコーを迎え入れる狙いは、オンチェーン上でより開かれた資本市場を実現することにある。現在、スタートアップ創業者は資金調達の難しさに直面し、個人投資家もプライベートセールに参加する機会が限られている。エコーのツール群を統合することで、コインベースはプロジェクトと投資家を直接結び、資金の流れをブロックチェーン上で完結させることを目指す。
同社はまずソナーを通じたトークン販売を展開し、将来的にはトークン化証券や実世界資産(RWA)などへの対応も計画している。オンチェーンでの資本形成を促進することで、より効率的で透明な市場を作り上げる考えだ。
「Liquifi」に続く戦略的買収でエコシステムを拡張
コインベースは2025年7月、トークン生成やキャップテーブル管理を効率化する「Liquifi(リクイファイ)」を買収しており、エコーの買収はその延長線上にある。リクイファイがプロジェクト初期のトークン設計を支援するのに対し、エコーは次のステップである資金調達を担う。
取引所としての上場支援、カストディ、ステーキング、トレーディング機能とあわせ、コインベースは「トークンのライフサイクル全体を支援する体制」を整えつつある。
今回の買収は、コインベースが取引所から「Web3金融のインフラを担う企業」へと進化していることを象徴している。エコーの技術がもたらす透明性とアクセスの拡大は、資金調達の民主化を一段と押し進めるだろう。オンチェーン上で完結する資本市場の整備は、暗号資産業界に新たな成長フェーズをもたらす可能性が高い。
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