シンガポールを本拠とする暗号資産(仮想通貨)マイニング企業「Bitdeer Technologies Group(ビットディア・テクノロジーズ・グループ、以下ビットディア)」は18日、2025年Q2(4~6月期)の未監査決算を公表した。
機器販売とマイニング拡大で収益拡大
ビットディアは、クラウドハッシュレート提供、ホスティング、マイニング機器の設計・販売に至るまで、ビットコインを中心とした仮想通貨マイニング事業を多角的に展開する業界有数のプレイヤー。今回の決算は、その幅広い事業構造が「光と影」を同時に映し出すものとなった。
Q2の総収益は1億5,560万ドルに達し、前年同期の9,920万ドルから56.8%の増加を示した。前Q1比でも121.9%の伸びと大幅な成長を遂げている。この結果は、主として二つの要因に支えられている。
第一に、自社マイニング事業の強化がある。ビットディアは継続的にハッシュレートを拡大しており、収益の柱として拡大に貢献した。第二に、外部向けに展開した自社開発の「SEALMINER A2(シールマイナー・エイツー)」の販売が収益増を押し上げた。特にこの機器販売は6,950万ドルを計上し、事業ポートフォリオに新たな収益源として加わった。
しかし、華々しい増収の裏側で、収益性には厳しい現実がある。
当期の純損失は1億4,770万ドルに達し、前年同期の1,770万ドルの損失から大幅に拡大した。費用面での圧力が強まっており、研究開発費や設備投資、減価償却などのコストが短期的な収益を押し下げた。
また、粗利益は1,280万ドルと前年同期の2440万ドルから減少しており、売上規模の拡大にもかかわらず利益率は悪化した。加えて、調整後EBITDAは1,730万ドルにとどまり、前年の2,350万ドルから減少している。収益成長と損失拡大が併存する、「アンバランスな決算内容」といえる。
但し、同社の財務基盤が脆弱化しているわけではない。報告によれば、現金残高は2億9,980万ドル、さらに保有する仮想通貨は1億6,930万ドルに達しており、一定の流動性を維持していると考えられる。将来の成長投資に向けた余力は確保されているといえる。
さらに、ビットディアは年末までに自社マイニング能力を40 EH/sに引き上げる計画を明言している。設備拡張と技術開発の双方を進めることで、収益基盤の強化を図ろうとしていることがうかがえる。もっとも、この計画の実現が利益率改善につながるのか、あるいはさらなるコスト増を招くのかは現時点では読みにくい。
今回の決算は、ビットディアが「量の拡大」と「利益の圧迫」という相反する現象を同時に抱えていることを示した。自社マイニングと機器販売の二本柱は確かに成果を上げつつあるが、収益性改善への道筋は依然として課題である。投資家や業界関係者にとって、同社が次のQ3以降でこの不均衡をどのように調整していくのかが、大きな焦点となるだろう。