2025年も終盤に差しかかるなか、「デジタルゴールド」と称されるビットコイン(BTC)が想定外の低迷を続けている。株式市場や金など主要資産が上昇する一方で、ビットコインの年初来上昇率はわずか5%強にとどまり、トランプ大統領再就任後の「追い風相場」を期待していた投資家の期待は裏切られる形となった。
23日に暗号資産(仮想通貨)取引所ビットメックスが公開した分析記事によれば、この背景には、長期保有者の売り圧力、マイナーの事業転換、そしてETF資金流入の停滞という複合的な要因が絡み合っているという。
長期保有者の売り、マイナーのAI転向、ETF停滞――三重苦が重なる
長期保有者による売り圧力
価格が10万ドル付近で停滞する中、いわゆる「OG(オリジナル・ギャング)」と呼ばれる古参投資家の売りが目立っている。ビットメックスの分析によれば、長期間動かなかったコインの移動が増え、特に10万ドルを超える局面ではOGによる売却が顕著だ。
AI関連株など他資産の上昇も追い風となり、テクノロジー志向のOGがビットコインから新興分野へ資金を移している可能性が高い。10月には特定の大口ウォレットが6億ドル(約916億円)超のBTCを取引所に送金しており、こうしたOGの動きが上値を抑える要因となっている。
マイナーのAI事業転換が生む懸念
マイニング企業の間では、AIデータセンター事業への転換が進む。コア・サイエンティフィックやアイリスエナジーなどは既に一部のインフラをAI向けに転用したほか、ライオットやクリーンスパークといった伝統的に純粋なマイナーでさえAI事業への準備を進めている。
これらは収益性向上を狙った動きだが、マイナーの離脱によりハッシュレートが低下すれば、ネットワークの分散性やセキュリティに悪影響を及ぼす懸念がある。
ETF停滞と政府介入の影響
需要面では、ETFの動向が鍵を握る。年初にはETF資金流入が価格上昇を後押ししたが、7月以降は流入が鈍化し、価格も足踏み状態にある。ビットメックスは「機関投資家の関心が頭打ちとなった可能性」を指摘する。
さらに、米政府によるビットコインの押収増加も懸念材料だ。政府保有分の拡大は、ビットコインの「非政府的」「検閲耐性」という理念を揺るがすものであり、分散型資産としての信頼に影を落としている。こうした動きが、匿名性を重視するジーキャッシュなどのプライバシーコインへの資金シフトを促しているとされる。
以上のような分析を踏まえ、ビットメックスはビットコインが再び上昇基調に転じるには、供給面での売り圧力の緩和と、ETF資金流入の回復が必要だと分析している。特に、取引所への大口送金の減少とETF純資産価値(NAV)の上昇が、反転のサインとなる可能性があるという。
現在のビットコイン市場は、供給と需要の両面で「調整期」にあるといえる。価格変動に一喜一憂するよりも、ネットワークの強靭性や制度的信頼をいかに回復するかが今後の鍵だ。ビットコインが再び「デジタルゴールド」としての存在感を示すためには、短期的な材料よりも長期的なエコシステムの健全性を見据える視点が求められるであろう。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=152.71円)




