信用創造と戦時体制が価格上昇の背景に
暗号資産(仮想通貨)取引所「BitMEX(ビットメックス)」の共同創設者であるアーサー・ヘイズ氏は23日、自身のエッセイを更新し、ビットコインとイーサリアムに対する極めて強気な価格予測を公開した。
ヘイズ氏は、米国経済が事実上の「戦時経済」へと移行し、それに伴う大規模な「信用創造(法定通貨の供給拡大)」が、仮想通貨市場に前例のないバブルを引き起こすと分析。その結果として、2025年末までにビットコインは25万ドル、イーサリアムは1万ドルに達するとの見解を示した。
構造的背景①:米国の「戦時経済化」と信用創造
ヘイズ氏の分析の根幹にあるのは、「投資で利益を上げるために最も重要な変数は、法定通貨の供給量がどう変化するかを理解すること」という見方である。
同氏は、現在の米国が地政学的な要請から、半導体やレアアースといった戦争遂行に不可欠な物資の国内生産を急いでおり、そのために「国家主導の資本主義的経済体制」へと移行していると指摘する。
このシステム下では、政府が重要産業の利益を保証することで、商業銀行が積極的に融資を行うようになる。ヘイズ氏はこれを「貧者のための量的緩和(QE 4 Poor People)」と呼び、このプロセスが議会の承認を必要とせず、政府と銀行の裁量で法定通貨(信用)を無から生み出す「信用創造の間欠泉」になると説明する。この結果、必然的に大規模なインフレが発生するというのが同氏の見立てだ。
構造的背景②:仮想通貨が「国策バブル」の受け皿に
ヘイズ氏は、政府がこの信用創造によって生じるインフレ圧力を社会不安なく管理するためには、そのエネルギーを特定の資産バブルに向ける必要があると論じる。そして、トランプ政権がその「国策バブル」の受け皿として選ぶのが、仮想通貨であると予測する。
その理由として、以下の3点を挙げている。
- 幅広い所有者層:株式を保有していない若者やマイノリティ層でも仮想通貨を保有している割合が高く、市場が上昇すれば、より多くの国民が政権の経済政策に満足する。
- 制度的アクセス:確定拠出年金プランから仮想通貨への投資が許可されたことで、巨額の資金が流入する道筋ができた。
- 税制優遇:トランプ大統領が提案している仮想通貨のキャピタルゲイン税撤廃が実現すれば、投資をさらに加速させると期待されている。
構造的背景③:仮想通貨バブルとステーブルコインが米国の財政赤字を埋める
さらにヘイズ氏は、この「国策バブル」が、政府自身の財政問題を解決する上で決定的な役割を果たすと指摘する。
仮想通貨市場全体の時価総額が上昇すると、その一部は利益確定や待機資金として、米ドルに連動するステーブルコインに流入する。そして、「Tether(テザー)」社に代表されるステーブルコイン発行企業は、その裏付け資産の大部分を米国短期国債で運用しているからだ。
つまり、「仮想通貨市場の拡大→ステーブルコインの時価総額増加→米国短期国債の需要増加」というサイクルが生まれる。これにより、政府は戦時経済を維持するために必要な巨額の財政赤字を、仮想通貨市場の成長を利用してカバーできるという、自己完結的な構造が完成するとヘイズ氏は分析する。
価格予測:BTCは25万ドル、ETHは1万ドルへ
これらのマクロ経済的な構造変化を背景に、ヘイズ氏は「なぜあなたは仮想通貨に全力で投資していないのか?」と問いかけ、自身はすでに全力で投資していることを明言。その上で、2025年末の具体的な価格目標を以下のように示した。
- ビットコイン(BTC):25万ドル
- イーサリアム(ETH):1万ドル
特にイーサリアムについては、「来るイーサリアムの強気相場は、市場に新たな風穴を開けるだろう」と述べ、イーサリアムが、欧米の機関投資家からの強い支持を背景に、次の上昇局面を牽引するとの強気な見方を示している。ヘイズ氏の予測通りにバブルが訪れるのか、今後の市場を注視しよう。
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