米SECアトキンス委員長、仮想通貨規制の「新しい日」を宣言──明確なルールと支援へ方針転換

伊藤 将史
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仮想通貨の発行・保管・取引を軸に改革

米国証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス新委員長は12日、ワシントンD.C.で開催された「トークン化に関する暗号資産(仮想通貨)タスクフォース円卓会議」の基調講演において、仮想通貨規制に対する大幅な方針転換を発表した。「SECにとって新しい日だ」と宣言し、これまでの執行主導型のアプローチから、明確なルール形成とイノベーション支援を重視する姿勢へと舵を切る考えを明らかにした。

トランプ大統領によって任命されたアトキンス委員長は、SECは今後、場当たり的な法執行措置によってではなく、既存のルールメイキング権限、解釈指針、免除権限を活用して、市場参加者の目的に合った基準を設定していくと強調した。

アトキンス委員長は講演の中で、近年のSECの対応について言及。前委員長であるゲイリー・ゲンスラー氏時代について「頭を砂に突っ込むような(=問題解決にならない非現実的な)アプローチであり、仮想通貨が消え去ることを望んでいたかのようだ」と述べた。さらに、法執行を通じた規制を敷き、企業に対して「話を聞きに来い」と呼びかけながらも、実際には新技術に対応した登録フォームの整備など必要な適応を行わなかった点を厳しく批判している。

その上で、今後の具体的な取り組みとして以下の3つの主要分野における計画を示した。

  1. 発行(Issuance):証券に該当する仮想通貨、または投資契約の対象となる仮想通貨の配布に関して、明確かつ合理的なガイドラインを確立する意向を示した。
  2. カストディ(Custody):登録業者が仮想通貨をどのように保管するかについて、より多くの選択肢を提供することを支持。どのような業者が「適格カストディアン」に該当するか、その判断基準や定義を示す指針を整備する必要があるとした。また、特定の状況下でファンドやアドバイザーによるセルフカストディ(自己保管)を可能にするための規則更新の必要性にも言及している。
  3. 取引(Trading):登録業者が市場の需要に応じて、より多様な商品をプラットフォームで取引できるようにすることを支持。証券と非証券(仮想通貨など)を単一のプラットフォームで提供する「スーパーアプリ」のような構想にも触れ、ATS(代替取引システム)規制の近代化や、仮想通貨の全国証券取引所への上場・取引を可能にするためのガイダンスやルールメイキングの可能性を検討。

さらにアトキンス委員長は、現行のSEC規則と互換性がない可能性のある新しい製品やサービスを市場に投入しようとする事業者に対し、条件付きの免除措置が適切かどうかを探求したいとの考えも示した。

アトキンス新委員長は、これらの取り組みを通じて、トランプ大統領の政権および議会と連携し、「米国を地球上で最高の仮想通貨市場の場所にすること」を目指すと締めくくった。今回の講演は、SECが今後、仮想通貨業界に対してより建設的かつ明確なアプローチを取ることを示唆するものとして注目される。

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2017年の仮想通貨ブームの頃に興味を持ち、以降Web3分野の記事の執筆をし続けているライター。特にブロックチェーンゲームとNFTに熱中しており、日々新たなプロダクトのリサーチに勤しんでいる。自著『GameFiの教科書』。
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