フランスの半導体企業「Sequans(シーケンス)」は4日、自社が保有するビットコイン(BTC)の一部を戦略的に売却し、その資金を転換社債の一部償還に充てたことを明らかにした。暗号資産(仮想通貨)の企業活用の動きが進む中での同社の決定は、ビットコインが企業の資金運用や財務の柔軟性を高める手段として定着しつつあることを示している。
ビットコイン信念に変わりなし、売却は戦略的判断と強調
シーケンスは2025年7月に発行した1億8,900万ドル(約290億円)の転換社債のうち、50%にあたる約9,450万ドル分を償還。その資金源を確保するため、同社は保有する3,234 BTCのうち、970 BTCを売却したという。これにより、ビットコイン保有量は減少したものの、負債圧縮を通じて財務基盤の安定化を実現した形だ。
償還の結果、財務指標の改善は顕著に現れている。シーケンスの総純資産に対する負債比率(Debt-to-NAV ratio)は55%から39%へと低下し、従来よりも財務的な健全性が高まった。同社はこの償還が、以前発表した「米国預託株式(ADS)の自社株買いプログラム」の後押しとさらなる株主価値向上に寄与すると期待を示している。
シーケンスCEOのジョルジュ・カラム氏は発表の中で、「ビットコインへの深い信念や長期的な財務戦略に変わりはない」とコメント。今回のビットコイン売却が短期的な価格動向によるものでなく、あくまで資本効率を最適化するための戦略的判断であることを強調した。
財務的な柔軟性の向上を受け、シーケンスは優先株の発行やビットコインを活用した利回り獲得(イールドジェネレーション)など、今後より高度な資本戦略を追求する可能性を示唆している。半導体産業という本業に加え、暗号資産を戦略的に活用する姿勢を強めることで、長期的な企業価値の創出を目指す狙いだろう。
今回の動きは、暗号資産を企業経営における実用的な財務資産として位置づける新たな流れを象徴している。シーケンスの判断は、テクノロジー企業における資産運用の在り方に一石を投じる事例となりそうだ。
関連:イーサジラ、イーサリアム売却で自社株買い実施──株価の割安是正へ
関連:バリュークリエーション、保有ビットコイン全売却500万円の売却益計上
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=153.6円)




