米財務省外国資産管理局(OFAC)は4日、北朝鮮によるサイバー犯罪とIT労働者詐欺から得た資金の洗浄に関与した8人と2団体を制裁対象に指定したと発表した。財務省によると、北朝鮮関連のサイバー犯罪者は過去3年間で30億ドル以上を窃取しており、その大半が暗号資産(仮想通貨)だという。
530万ドルの暗号資産を管理した北朝鮮銀行員を制裁
制裁対象となったのは、北朝鮮の銀行員ジャン・ククチョル氏とホ・ジョンソン氏で、2人は、米国が制裁中の北朝鮮の銀行のために、暗号資産530万ドルなどの資金を管理していた
財務省は、これらの資金の一部が米国の被害者を標的にした北朝鮮のランサムウェア攻撃者や、北朝鮮IT労働者からの収益に関連していると指摘している。
また、北朝鮮のIT企業「コリア・マンギョンデ・コンピュータ・テクノロジー・カンパニー(KMCTC)」とその代表者ウ・ヨンス氏も制裁対象となった。KMCTCは中国の瀋陽と丹東の少なくとも2都市からIT労働者の派遣事業を運営しており、中国国民を銀行代理人として利用することで資金の出所を隠蔽していたという。
中国・ロシア拠点の北朝鮮金融機関代表者も制裁対象に
さらに、中国とロシアに拠点を置く北朝鮮金融機関の代表者5人も制裁対象となった:
- ホ・ヨンチョル(Ho Yong Chol): 米国指定済みのコリア・デソン・バンクのために250万ドル以上の米ドルと人民元の送金を支援、また別の北朝鮮政府関連組織のために8,500万ドル以上の取引を管理
- ハン・ホンギル(Han Hong Gil): 米国指定済みのコリョ商業銀行の従業員で、柳京商業銀行のために63万ドル以上の取引を調整
- チョン・ソンヒョク(Jong Sung Hyok): ロシア・ウラジオストクの北朝鮮外国貿易銀行首席代表
- チェ・チュンポム(Choe Chun Pom): 北朝鮮中央銀行の代表者で、20万ドル以上の取引を支援、またロシア当局者の平壌訪問も調整
- リ・ジンヒョク(Ri Jin Hyok): FTBの代表者で、FTBのダミー会社のために35万ドル以上の取引を支援
加えて、北朝鮮の金融機関「リュジョン・クレジット・バンク」も制裁対象に指定された。同銀行は中国と北朝鮮間の制裁回避活動に金融支援を提供し、北朝鮮の外貨収入送金、マネーロンダリング、海外労働者の金融取引を行っていたという。
「核兵器開発の資金源を断つ」と米財務省
ジョン・K・ハーリー財務次官(テロリズム・金融情報担当)は声明で、「北朝鮮国家支援のハッカーは、同政権の核兵器プログラムに資金を供給するために金を盗み、洗浄している。平壌の兵器開発のために収益を生み出すことで、これらの行為者は米国と世界の安全保障を直接脅かしている。財務省は、北朝鮮の不法な収益源を断ち切るために、これらの計画の背後にいる促進者と支援者を追及し続ける」と述べた。
財務省は、北朝鮮のサイバー攻撃者が高度なマルウェアやソーシャルエンジニアリングなどの洗練された手法を使用しており、他のどの国にも匹敵しない規模で金融窃盗を行っていると指摘。また、北朝鮮IT労働者は世界中に配置され、偽造または盗用した身分証明書で国籍を隠蔽しながら、フリーランスサイトで雇用契約を獲得し、年間数億ドルを稼いでいるという。
今回の制裁により、指定された個人・団体の米国内の全資産が凍結され、米国人との取引が原則として禁止される。
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