分散型金融(DeFi)プロトコルである「Elixir(エリクサー)」は6日、同社が発行する合成ドルステーブルコイン「deUSD」の提供を終了すると発表した。今回の決定は、deUSDの主要な借り手であるストリーム・ファイナンスが巨額の損失を公表し、事実上の業務停止に追い込まれたことを受けたものだ。
一般保有者への償還進行中、発表時点で80%を完了
ストリーム・ファイナンスは4日、同社の運用資産のうち約9,300万ドル(約142億円)が外部ファンドマネージャーによって失われたと公式Xで明らかにした。これを受け、同社は損失原因と範囲の調査を開始。プラットフォーム上の入出金を一時停止する事態に至った。なお、業務再開時期については依然として明らかにされていない。
エリクサーによると、ストリーム・ファイナンスはdeUSD総供給量の約90%に相当する約7,500万ドル分(約114億円)を保有しているという。なお、エリクサー側はその裏付け資産をレンディングプロトコルであるモルフォを通じたローンという形で保持していると説明している。
ストリーム・ファイナンスが一連の騒動によりレンディングポジションの返済や清算を行わないと判断したことで、deUSDの裏付け構造に歪みが生じ、ステーブルコインとしての安定性を維持できなくなった形だ。
この状況を受け、エリクサーは一般保有者の資産保護を最優先とする対応を進めている。同社はすべてのdeUSDおよびsdeUSD保有者の残高スナップショットを取得し、過去48時間でストリーム・ファイナンスを除く全体の80%にあたる保有者への償還を完了したと説明。残る保有者についても、特設ページを通じて1 deUSD=1 USDCでの償還対応を進めていくとしている。
今後についてエリクサーは、モルフォをはじめとする主要DeFiプロトコルと連携し、ストリーム・ファイナンスが抱えるレンディングポジションのローン返済や清算の支援を行う方針を示している。
今回の一連の事態はDeFiのエコシステムにおいて、少数の大口が抱えるカウンターパーティリスクが「ステーブルコインの安定性」という根幹にいかに影響を及ぼすかを示した。大口のリスクを分散し、予期せぬ事態においてもプロトコルが自律的に機能するといった、より強靭なリスク管理体制の構築がDeFi市場に求められている。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=153.3円)




