米フォーチュン誌は11日、米大手暗号資産(仮想通貨)取引所コインベースが、英国を拠点とするステーブルコインのスタートアップBVNKとの間で進めていた、約20億ドル(約3,087億円)規模の買収交渉を中止したと報じた。
ステーブルコインM&Aが活発化する中での協議が中止に
この交渉では両社が10月に独占交渉に入り、デューデリジェンスのプロセスに進んでいたと報じられている。
両社が交渉を中止した理由は明らかになっていないものの、コインベースの広報担当者はフォーチュンの取材に対して「BVNKの買収の可能性について議論した後、両当事者は前進しないことに相互に合意した」と述べた。なお、BVNKの広報担当者はコメントを控えている。
コインベースは、今年1月以降、暗号資産デリバティブ取引所デリビットの29億ドル(約4,476億円)の買収を含む、注目度の高い買収を続けてきた。
第3四半期の決算説明会において、「これらすべてのM&Aは、我々の中核である取引と決済の焦点に真に貢献するものだ」と宣言している通り同社は決済分野にも注力していたが、その大きな一歩となるBVNK買収は失敗に終わったようだ。
同社の他にも、フィンテック企業によるステーブルコイン企業の買収およびステーブルコイン事業への参入は近年のトレンドとなっている。
今年2月にはフィンテック大手のストライプが、ステーブルコインスタートアップであるブリッジを11億ドル(約1,698億円)で買収。BVNKの買収合戦にかつて参加していた決済大手のマスターカードは、現在は暗号資産インフラ企業ゼロハッシュと15億ドル(約2,315億円)から20億ドルでの買収交渉を進めているとフォーチュン誌は報じている。
また、10月にはモダントレジャリーがビームを約4,000万ドル(約62億円)で買収済みだ。DeFi(分散型金融)のアーベやモナドなども、独自のステーブルコイン戦略を進めている。
BVNKの買収は成立しなかったものの、コインベースは「取引と決済」を事業の中核に据えると宣言している。今後、別の企業の買収に乗り出すのか、あるいは自らステーブルコイン事業に取り組むのか、その動向が注目される。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=154.33円)




