暗号資産(仮想通貨)取引所「BitMEX(ビットメックス)」の共同創設者であるアーサー・ヘイズ氏は9日、自身のエッセイでこれまで市場の定説とされてきた「ビットコインの4年周期」が終焉を迎え、「新たな時代」が訪れるとの見解を示した。
ビットコイン4年周期の正体は「米中の金融緩和」
ヘイズ氏は9日に更新したエッセイ『Long Live the King!』において、多くのトレーダーがビットコインの4年周期を「半減期」と結びつけているが、それは歴史的な偶然に過ぎないと断言。同氏の分析によれば、過去3回の強気相場の真の原動力は、米ドルと中国人民元の「価格と量」、すなわち世界的な流動性(マネーサプライ)のサイクルであった。
- ジェネシス・サイクル(2009〜2013年):2008年の金融危機後、米国と中国が同時に大規模な金融緩和を実施。この米中両国による流動性供給が最初の強気相場を生み出したが、2013年に両国が金融引き締めに転じたことでバブルは崩壊した。
- ICOサイクル(2013〜2017年):この時期の主役は中国だった。米ドルが引き締め基調にある中、中国は金融緩和策を推し進め、国内の融資を大幅に拡大させた。この「人民元の洪水」がビットコイン価格を押し上げた。
- コロナ・サイクル(2017〜2021年): 米国政府による大規模な現金給付が市場に流れ込み、あらゆる資産価格を押し上げた。このサイクルは米ドル主導であり、中国の金融政策は大きな影響を与えなかった。
ヘイズ氏は、これら過去のサイクルがそれぞれ異なる流動性の供給源によって引き起こされ、その供給が止まった時に終焉を迎えたと分析。その期間が偶然にも約4年であっただけであり、「サイクルを動かしていたのは半減期ではなかった」と結論付けている。
「トレーダーたちは歴史的なパターンを当てはめて、この強気相場の終わりを予測したがっている」が、そもそも4年周期の正体は金融緩和であるため、過去のパターンに当てはめて「暴落するタイミング」を図るのは無意味であると、同氏は主張する。
今後は「法定通貨の価値切り下げ」が常態化し、ビットコインに流れ込む
では、なぜ2025年現在のビットコインには“4年サイクル”があてはまらないのか。ヘイズ氏は、世界の金融政策が新たな局面に突入したと指摘する。
同氏は、米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ率が目標を上回る中でも利下げを実施しており、政治的圧力の影響を受けている可能性があると指摘した。さらに、銀行規制の緩和によって重要産業向けの融資を拡大する政策が見込まれると予測している。一方、中国もかつてのような大規模な積極融資は行わないものの、デフレ脱却のために金融緩和政策を継続する姿勢を見せている。
米国ではインフレ率が目標を上回っているにもかかわらず、政治的な圧力が米連邦準備制度理事会(FRB)に利下げを強いる状況が生まれているという。さらに、銀行規制の緩和を通じて、経済を刺激するための信用拡大(融資増加)が促進される可能性も高い。一方で中国も、かつてのような大規模な積極融資は行わないものの、デフレ脱却のために金融緩和政策を継続する姿勢を見せている。
ヘイズ氏は、このように両国が「(実質的に)自国通貨の価値を継続的に切り下げる」政策を常態化させると予測する。
そしてこの「終わらない金融緩和」という新たな世界では、伝統的な金融機関も、顧客の資産をインフレから守るために、ビットコインや暗号資産関連商品を扱う局面に入るとヘイズ氏は見ている。
同日、ヘイズ氏はXで「伝統的金融機関たちが、自国通貨の価値が下落するリスクにようやく気づいた」と投稿。そして「銀行家(banksters=bankとギャングスターを合わせた造語)たちが金、暗号資産、テック株のデリバティブを顧客に売る時が来た」とも述べている。この動きが、「ビットコインの新たな上昇トレンドを生み出す」というのが同氏の主張である。
ヘイズ氏は、「王は死んだ、王よ永遠なれ!(The king is dead, long live the king!)」という慣用句でエッセイを締めくくっている。これは、先代の王が崩御し、新たな王が即位したときに使用される言葉である。ビットコインの「4年周期」という古い王=ナラティブが死に、「通貨切り下げに対するヘッジ」という新しい王=確かな需要が誕生したことを意味している。この構造変化が、ビットコインにこれまでにない持続的な需要をもたらし、新たな上昇トレンドを生み出すというのが、同氏の新たな見解である。
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