アブダビの政府系ファンドである「アブダビ投資評議会(ADIC)」が、第3四半期にビットコイン現物ETFの保有量を3倍以上に拡大させていたことがわかった。19日、ブルームバーグが報じた。
ファンド広報「ビットコインは金と並んで今後の重要性が増す」
規制当局への提出書類によると、ADICは9月30日時点でブラックロックの「iShares Bitcoin Trust ETF(IBIT)」を約800万株保有していた。
その評価額は、当時のレートで約5億1,800万ドル(約761億円、1ドル=147円換算)に達する。同社は第2四半期末時点では240万株の保有にとどまっていたことから、この四半期で大幅な買い増しを実施した形だ。
ADICの広報担当者はブルームバーグの取材に対し、「我々はビットコインをゴールド(金)と同様の『価値の保存手段』とみなしている」と回答した。さらに、「世界がデジタルな未来へと移行する中で、ビットコインはゴールドと並んでますます重要な役割を果たすだろう」との見解を示し、短期的および長期的な戦略の一部として両資産を保有していく方針を明らかにした。
今回の買い増しは、暗号資産(仮想通貨)市場が激しい変動に見舞われる前の第3四半期中に実施された。
第3四半期が終了した後、ビットコインはETFへの巨額流入を背景に、10月初旬には過去最高値となる12万6,251ドルまで上昇した。しかし、数十億ドル規模のレバレッジポジションの清算などが引き金となり、相場は急暗転。価格は一時9万2,000ドルを割り込んだ。
これに伴い、IBITの価格も9月30日以降、約20%下落している。足元の市場心理は冷え込みを見せており、11月に入ってからは米国の現物ETF全体で巨額の資金流出が発生した。IBIT単体でも、11月18日に過去最高となる5億2,300万ドル(約817億円)の流出を記録している。
アブダビの政府系ファンドは、膨大なオイルマネーを背景に世界規模で多様な投資を行っており、今回のビットコインETFへの積極的な参加もその一環である。こうした巨大資金が暗号資産を資産クラスとして受け入れ始めていることは、個人投資家が市場の重心や今後の価格動向を判断するうえで重要な手がかりとなる。
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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=156.4円)




