総額10億ドル超の物件ポートフォリオ、買い手の完全身元秘匿を実現
米国の高級不動産仲介大手「Christie’s International Real Estate(クリスティーズ・インターナショナル・リアル・エステート)」が、暗号資産(仮想通貨)による不動産取引専門部門を新設したことが24日、ニューヨーク・タイムズの報道により明らかになった。米国の主要仲介会社としては初の試みで、弁護士、アナリスト、仮想通貨専門家からなる専門チームを組織した。
同社は1995年設立の高級不動産仲介会社で、世界的オークションハウス「Christie’s」のブランドを冠し、世界49カ国・地域で豪邸や高級物件の売買仲介を手がけている。富裕層や投資家を主要顧客とし、美術品収集家との顧客層重複も特徴だ。
同社ロサンゼルス本部のアーロン・カーマンCEOが木曜日に部門を開設。過去2年間で6,500万ドルのビバリーヒルズ物件など、複数の仮想通貨取引を手がけてきた実績を背景に、「仮想通貨は定着し、今後数年でさらに拡大する」と市場の変化を指摘した。
トランプ政権下で仮想通貨への支持が高まる中、先週には1ドルペッグのステーブルコインに関する連邦規則を定めたGENIUS法(ジーニアス法)が署名された。下院では、仮想通貨業界の規制緩和を目的としたCLARITY法(クラリティ法)も294対134の賛成多数で可決されている。トランプ大統領の総資産は仮想通貨事業によって約71億ドルに達し、一族の事業「World Liberty Financial」も繁栄している。
カーマン氏は現在、仮想通貨での取引が可能な高級物件のポートフォリオを10億ドル超にわたって取り扱っているという。ロサンゼルス・ベルエアの1億1,800万ドルの豪邸「La Fin(ラ・ファン)」、ビバリーヒルズの6,300万ドル物件「Nightingale(ナイチンゲール)」、全面ミラーの外壁が特徴の「Invisible House」(インビジブル・ハウス、1,795万ドル)などが含まれる。
仮想通貨の不動産市場での利用が進むなか、住宅ローン分野でも制度対応が始まっている。6月には、住宅ローン申請時の資産評価において仮想通貨投資を考慮するよう、「Fannie Mae(ファニーメイ)」および「Freddie Mac(フレディマック)」に指示が出された。こうした制度対応の背景には、投資家層における仮想通貨保有の拡大もある。ギャラップの調査によれば、米国で仮想通貨を保有している投資家の割合は、2021年の一桁台から17%にまで上昇している。
カーマン氏は仮想通貨が銀行を介さない取引を可能にする点を強調し、「5年以内に米住宅取引の3分の1以上が仮想通貨になる」と予測。現在、融資を要する物件での仮想通貨受け入れについて、複数の大手銀行と協議中だという。
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