電柱やマンホールといったインフラ設備をスマートフォンで撮影して、投稿数や移動距離を競い合う──そんなユニークなゲーム「PicTrée(ピクトレ)」が、サービス開始から1周年を迎えました。プレイヤーが1年間で撮影したインフラの写真は累計150万枚。Web3とゲーミフィケーションを組み合わせたこのアプリが、社会課題の解決に挑む新たなモデルとして注目されています。
ピクトレを展開する2社が新会社設立

ピクトレを手がけるのは、Web3エンタメ企業の「Digital Entertainment Asset Pte. Ltd.(DEA)」と、インフラ事業に特化した新事業開発会社「Greenway Grid Global Pte. Ltd.(GGG)」。どちらもシンガポールに本社を構える企業です。
DEAは「PlayMining(プレイマイニング)」などのプロジェクトを通じ、ブロックチェーンやNFTを活用した課題解決型のゲーム開発を行ってきました。一方のGGGは、東京電力パワーグリッドや中部電力が出資するインフラ領域の専門企業で、現場に根ざした知見を強みとしています。
2025年4月には、両社が合弁会社「Growth Ring Grid(GRG)」を共同設立。市民参加型のインフラ保守を本格的に社会実装する体制を整え、“インフラの民主化”をテーマに掲げた新たな挑戦が始まっています。
『ピクトレ』とは?

『PicTrée(ピクトレ)』は、スマートフォンを使って電柱やマンホールといった“電力アセット”を撮影し、その数や距離をチームで競う無料ゲームです。
プレイヤーは3つのチームから所属先を選び、撮影したインフラに「チェックイン」したり、アセット同士を「コネクト(繋ぐ)」することでポイントを獲得。活躍に応じて、Amazonギフト券や独自トークン「DEAPcoin(DEP)」などの報酬を受け取ることができます。
このゲームの最大の特長は、単なる位置情報活用にとどまらず、プレイヤーの撮影データが実際のインフラ保守や地域観光の活性化にも役立てられている点です。
ピクトレの社会実装例とその反響

点検支援に活用される写真データ
この1年間で投稿された累計150万枚以上の写真は、実際のインフラ点検に役立っています。たとえば、電柱に絡まる樹木や鳥の巣といった異常の早期発見に寄与しました。また、都市部で多発するトラブルへの迅速な対応を目的に実施された「緊急ミッション」機能の実証では、90%以上の達成率を記録しています。
地域観光との連携
ミッションとして観光スポットが組み込まれることで、プレイヤーが地域を巡る新しい導線が生まれました。SNSでは「#前橋メシ」などのハッシュタグを使った投稿も広がり、地元の魅力を再発見する動きが活性化しています。
自走するプレイヤーコミュニティ
ピクトレには、DEAがこれまで育ててきたGameFiのコミュニティが基盤として存在します。オープンチャットでの交流や、現地での自主イベント、遠征企画などが活発に行われ、プレイヤー同士の交流が地域に根づきつつあります。
6都県での実証展開と地域への波及効果

ピクトレはこれまでに、東京都(3区)、栃木県、群馬県、茨城県、秋田県全域、静岡県沼津市の6都県で実証的に展開されてきました。
誰でもスマートフォンひとつで始められる手軽さから、地域住民だけでなく、他地域のプレイヤーも参加しています。こうした動きが、地元飲食店などへの経済的な波及効果にもつながっています。
全国展開と他分野展開を見据えた今後の計画
ピクトレは今後、合弁会社GRGを中核に据えながら、全国47都道府県への展開を計画しています。さらに、撮影対象を電力インフラに限らず広げることで、各地域の課題に応じた柔軟な点検支援が可能となるよう取り組みを進めていく方針です。
また、防災・教育・観光といった他分野への応用も視野に入れており、ピクトレは「Web3 × 社会貢献」の実装モデルとして、さらなる進化を目指しています。
おわりに
ピクトレは、「日常のなかで社会に関わる」手段として機能してきました。累計150万枚のインフラ写真は、市民による点検支援の有効性を示しています。今後どのように社会インフラに組み込まれていくのか、その動向に注目が集まります。