FG Nexusに改称、2億ドルの戦略資金を確保
資産運用、マーチャントバンキング、再保険などを手がける米金融サービス企業「Fundamental Global(ファンダメンタルグローバル)」は30日、社名を「FG Nexus(FGネクサス)」へと変更し、2億ドルの第三者割当増資を実施して、暗号資産(仮想通貨)イーサリアムを企業の中核的な財務資産とする新戦略を開始すると発表した。奇しくもこの日は、イーサリアムが誕生してからちょうど10年という記念すべき日であった。
今回の戦略転換は、単なる投資以上の意味を持つ。いわば、伝統金融がその未来を仮想通貨の将来性に託そうとしている構図だ。同社が白羽の矢を立てたのは、数ある仮想通貨の中でもイーサリアム。その理由は、イーサリアムが単なる投機対象ではなく、デジタル金融の「基盤」であり、世界のステーブルコインやDeFi(分散型金融)、トークン化された資産の大部分を支える決済レイヤーであるという認識に基づいている。したがって、FGネクサスが目指すのは、イーサリアムの価格上昇益だけではない。ネットワークの安定に貢献することで得られるステーキング報酬や、現実世界の資産をトークン化する新たなビジネス機会へのアクセスなど、多面的な価値の創出をねらう。
この計画を実現するため、同社は4,000万株の新株予約権を1株あたり5ドルで発行し、現金および仮想通貨で総額2億ドルを調達する。この資金調達には、仮想通貨業界の巨人たちが戦略的投資家として名を連ねる。マイク・ノヴォグラッツ氏率いる「Galaxy Digital(ギャラクシー・デジタル)」や大手取引所の「Kraken(クラーケン)」がその筆頭だ。特にギャラクシー・デジタルは、FGネクサスのイーサリアム財務の管理や資産運用を支援する戦略的アドバイザーの役割も担う。まさに、ウォール街と仮想通貨業界のトッププレーヤーが手を組んだ形だ。
変革の指揮を執るのは、ウォール街とWeb3の世界を知り尽くした精鋭チーム。デジタル資産部門のCEOには、ブロックチェーン業界の初期からのパイオニアであるマヤ・ヴジノヴィッチ氏が就任した。彼女は、かつて「General Electric(ゼネラル・エレクトリック)」でイーサリアムの業務応用を推進し、「Tether(テザー)」社のために銀行買収にも関与した経歴を持つ。
さらに、「TD Ameritrade(TDアメリトレード)」の元会長兼CEOであるジョー・モリア氏が経営アドバイザーとして参加することも、このプロジェクトの本気度を物語っている。モリア氏は「私のキャリアにおいて、世界市場を根本から変えるような地殻変動を何度も見てきた。イーサリアムは次世代金融サービスの基盤であり、FGネクサスの試みは投資家がその未来に参加するための最も戦略的な方法だと信じる」と期待を語った。
社名を新たに「FGネクサス」へと変える同社は、マーチャントバンキングや再保険といった既存事業で培った知見を、イーサリアム経済圏の拡大に応用していく構え 。伝統金融の巨人が、社名まで変えて仮想通貨の世界に大きく舵を切った今回の決断。それは、イーサリアムというブロックチェーンが持つ可能性に対する、市場からの力強い信任投票といえるだろう。
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