ビットコインが誕生した当初、その取引を主に担っていたのは、新しい技術に興味を持つ個人投資家でした。しかし、10年以上の時を経て、ビットコインの保有構造には大きな変化が見られます。
近年では、企業や国家といったより大きな組織がビットコインを保有するケースが増加しており、その保有比率のシェアも大きく変動しています。
本稿では、このビットコインの主要プレイヤーの変化を分析し、それが価格上昇にどのような影響を与えているのかを解説します。
初期のビットコインは、創設者であるサトシ・ナカモトの理念に基づき、個人間の分散型決済ネットワークとして構想されました。そのため、当初は主に技術的な知識を持つ個人投資家や愛好家がビットコインをマイニングしたり、取引したりしていました。
しかし、ビットコインの認知度が高まり、その価値が上昇するにつれて、より多くの個人投資家が市場に参入しました。
2017年ごろには個人投資家の中でもバブルだと話題になり、日本円でも220万円ほどまで上昇した頃には億り人と呼ばれる言葉が流行したこともありました。この時点では投資家はほぼ個人投資家が保有しているという状況となっています。
しかし2020年頃から、この状況に変化が見え始めます。米国のビジネスインテリジェンス企業であるストラテジー(旧マイクロストラテジー)が、自社の財務資産の一部をビットコインに投資したことを発表し、大きな注目を集めました。マイケル・セイラーCEOの主導のもと、ストラテジーはその後も積極的にビットコインの買い増しを続け、現在では最大の公開企業によるビットコイン保有者となっています。
この動きに追随するように、電気自動車メーカーのテスラも2021年にビットコインを購入し、一時的にその保有額を大きく増やしました。これらの企業の参入は、ビットコインが単なる投機的な資産ではなく、企業の財務戦略においても重要な役割を果たす可能性を示唆しました。企業がインフレ対策や現金の価値維持の手段としてビットコインを認識し始めたことが、このトレンドの背景にあると考えられます。
さらに近年では、国家レベルでのビットコイン保有も注目されています。エルサルバドルは2021年に世界で初めてビットコインを法定通貨として採用し、政府自身もビットコインを保有しています。また、米国政府も犯罪捜査などで押収したビットコインを大量に保有していることが知られています。世界各国でも中銀が準備資産としてビットコインを検討したりしてきており、プレイヤーが個人から企業、国へと広がりを見せていることが価格上昇に大きく寄与していることが理解できます。
これらの国家によるビットコインの保有は、ビットコインがもはや一部の投資家のための資産ではなく、国家の金融システムや資産管理においても考慮されるべき存在になりつつあることを示しているとも言えるでしょう。企業や国家といった大規模なプレイヤーがビットコインを保有することで、市場全体の需要が増加し、供給が限られているビットコインの希少性が高まります。
特に、マイクロストラテジーのように長期保有を前提とした企業による継続的な買い増しは、市場における売り圧力を減少させ、価格上昇を促す要因となります。また、機関投資家向けのビットコインETFの登場も、機関投資家や企業がビットコインに投資するハードルを下げ、資金流入を促進しています。
2024年の米国におけるスポットビットコインETFの承認は、まさにこの流れを加速させる大きな要因となりました。
一方で、このような大規模な保有者の増加は、市場の集中化という新たな課題も生み出しています。少数の企業や国家が大量のビットコインを保有することで、彼らの動向が市場全体に大きな影響を与える可能性があります。例えば、これらの大口保有者が一度に大量のビットコインを売却した場合、市場価格が急落するリスクも懸念されます。
結論として、ビットコインの主要プレイヤーは、初期の個人投資家から、企業、そして国家へと変化してきています。
この変化は、ビットコインがより成熟した資産クラスとして認識されつつあることを示しており、市場全体の需要増加と希少性の高まりを通じて、価格上昇の重要な要因となっています。しかし、市場の集中化という新たなリスクにも注意が必要です。
今後も、ビットコインの保有構造の変化とその価格への影響を注視していく必要があるでしょう。