米暗号資産(仮想通貨)インフラ企業のBakkt Holdings, Inc.(バックト・ホールディングス、NYSE:BKKT)は10日、2025年第3四半期の決算を発表した。同社は堀田丸正の株式約30%を取得し筆頭株主となったことで日本市場でも注目されている。
収益27%増、調整後EBITDA黒字転換
バックトの2025年第3四半期のGAAP収益(米国会計基準に基づく売上高)は4億220万ドル(約619億円)で、前年同期の3億1,630万ドル(約487億円)から27.1%増加した。暗号資産市場の活動活発化により、取引量が大幅に増加したことが主因だ。
調整後EBITDA(本業の稼ぐ力を示す指標)は2,870万ドル(約44億円)で、前年同期の2,010万ドル(約31億円)の損失から大幅に改善し、241%増を記録した。一方、GAAP純損失は2,320万ドル(約36億円)となったが、これは主に2024年の登録直接募集で発行したワラント負債の時価評価損3,720万ドルによるものだ。ワラント評価損は一時的な会計上の損失であり、実際の事業活動は黒字化を達成している。
同社のアクシェイ・ナヘタ最高経営責任者は「第3四半期はバックトの変革における決定的な瞬間だ。構造を簡素化し、戦略を明確にし、調整後EBITDAの黒字化を達成した。我々のリセットが機能している明確な証拠だ」と述べた。
3つの事業ラインに再編
バックトは今四半期、ロイヤリティ事業の売却を完了し、すべての非中核事業から撤退した。同社は現在、以下の3つの事業ラインに焦点を絞っている。
バックト・マーケッツは、機関投資家向けの暗号資産取引、流動性提供、規制準拠のカストディサービスを提供する。全米50州のライセンスとニューヨーク州のBitLicenseを保有し、B2BおよびB2B2C顧客にコンプライアンス準拠の取引環境を提供している。
バックト・エージェントは、AI対応のプログラマブルファイナンスおよびステーブルコイン決済プラットフォームだ。AIインターフェースと規制準拠のクロスボーダー決済を組み合わせ、銀行パートナーを通じて国際送金、貯蓄、利回り提供を実現する。
バックト・グローバルは、日本を皮切りとした国際展開を担う。マイノリティ投資モデルを通じて、バックトの技術とインフラを新市場に展開し、長期的な経常収益を創出する戦略だ。
ナヘタ氏は「我々は統合されたプラットフォームを構築した。市場がどのように取引し、資金がどのように移動し、価値がどのように保管されるかをつなぐものだ」と強調した。
財務体質強化と経営体制刷新
バックトは第3四半期末時点で、現金および制限付現金6,440万ドル(約99億円)を保有し、長期債務はゼロとなった。さらに11月3日には、複雑な株式構造を解消し、すべての株主を単一の株式クラスに統一した。これにより経営の透明性が向上した。
また、同社は取締役会にリチャード・ガルビン氏を新たに任命した。ガルビン氏は、グローバルな株式・デリバティブ・テクノロジー投資銀行業務で20年以上の経験を持ち、DACMのエグゼクティブ・チェアマン兼最高投資責任者として、ベンチャーおよび流動性デジタル資産市場への投資で深い専門知識を持つ。
ガルビン氏は「デジタル資産技術の採用が加速する中、バックトがインフラを拡大し、グローバルに展開するこの時期に取締役会に加わることができて嬉しい」とコメントした。
2026年に向けた成長戦略
ナヘタ氏は今後の方針について「第4四半期には変革を完了し、顧客採用を拡大し、2026年の加速に備える。技術スタックの強化、コスト削減、バックトブランドのリフレッシュを進めており、2026年第1四半期のインベスター・デイで次の成長フェーズを発表する予定だ」と述べた。
同社は、機関投資家向け取引スプレッド、カストディ手数料、ステーブルコインおよび決済ボリュームから収益化を図り、2026年以降の本格的な成長を目指している。
関連:仮想通貨ウォレット「エクソダス」、Q3純利益20倍超──BTC・ETH評価益拡大、グレイトフル買収
関連:イートロ、仮想通貨事業好調でQ3純利益48%増──米国で3銘柄から110銘柄に拡大
※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=154.02円)




