アルゼンチン裁判所、ミームコイン「Libra」事件で起業家3名の資産を凍結

伊藤 将史
14 Min Read
Highlights
  • アルゼンチン裁判所が、ミームコインLibra事件で起業家3名の資産を無期限で凍結し、資産保全を指示
  • Libraはソラナ上で発行され、ローンチ直後に急落しラグプル疑惑が浮上、推定被害は最大1.2億ドル規模
  • 大統領周辺を経由した資金の流れが捜査対象となり、米国ではRICO法違反を主張する集団訴訟が進行

アルゼンチンの連邦判事は8日、ミームコイン「Libra(リブラ)」に関連する詐欺事件の捜査において、米国人起業家ヘイデン・デイビス氏ら3名の資産を無期限で凍結するよう命じた。

2025年初頭に発行、ラグプル疑惑も

今回焦点となっているLibraは、2025年初頭にソラナ上でローンチされたミームコインである。
※かつてMeta(旧Facebook)社が計画し、のちに頓挫したステーブルコイン「Libra(リブラ、後にDiemと改名)」とは全くの別物。

Libraは、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領やその関係者との関連を強く示唆するプロモーション戦略で注目を集めた。しかし、ローンチ直後に価格が暴落。典型的な「Rug Pull(ラグプル、出口詐欺)」であったと見られており、推定1億ドル(約154億3,800万円)から1億2,000万ドル(約185億2,600万円)の被害が出ているとされる。

捜査中の資産保全のため凍結命令

連邦判事は、検察の要請に基づき、デイビス氏ら3名に対し、「prohibición de innovar(革新の禁止)」と呼ばれる無期限の仮処分命令を下した。

これは、刑事捜査が完了する前に容疑者が資産を処分することを防ぎ、詐欺の収益と見なされる可能性のある資産を保全することを目的としている。

この命令はアルゼンチン証券委員会(CNV)にも通知され、国内で活動するすべての暗号資産(仮想資産)サービスプロバイダーに対し、対象者の資産を凍結・ブロックするよう指示が出された。

大統領周辺への資金の流れも

地元紙「La Nación」によると、捜査当局は、デイビス氏からアルゼンチンのロビイスト2名(マウリシオ・ノベリ氏、マヌエル・テロネス・ゴドイ氏)を経由する、疑わしい資金の流れを追っている。

特に、デイビス氏とミレイ大統領が1月30日に大統領府で会談した直後の送金が注目されている。資料によると、デイビス氏は大統領が会談のセルフィーをツイートしたわずか42分後に、暗号資産取引所ビットゲットを通じて50万7,500ドル(約7,835万円)をロビイストに送金していた。

さらに深刻な疑惑として、ロビイストのノベリ氏がLibraのローンチの3ヶ月前に、ミレイ大統領に対し「大統領のイメージを収益化する」プロジェクトを提案していたことが浮上。関係者によると、ノベリ氏と大統領は、大統領のイメージを「個人的資産」として利用し、双方に巨額の利益を生み出す目的としたプロジェクトを議論していたという。

報道では、デイビス氏が2024年末に「ある金融家」へ送ったテキストメッセージも明るみに出ている。その中で同氏は「私は彼(ミレイ大統領)の姉妹に$$(お金)を送金している。そうすれば彼は私の言うことに署名し、私の望むことをする。クレイジーだ」と書き込んでいることから、大統領周辺への影響力を行使する計画があったようだ。

米国でも集団訴訟、RICO法違反を主張

アルゼンチンでの捜査と並行し、米国ニューヨーク州でも被害に遭った投資家らによる集団訴訟が拡大している。

投資家らは、デイビス氏、DeFi(分散型金融)プラットフォームMeteora(メテオラ)、およびその技術責任者とされるベンジャミン・チョウ氏が「本物の詐欺工場」を主導したと非難。虚偽のプロモーションと市場操作を組み合わせた「組織的なラグプル」を実行したと主張している。原告団は、この詐欺が組織的犯罪を罰する「RICO法(組織犯罪処罰法)」に該当すると主張しているという。

本事件は、暗号資産の「ラグプル案件」に関する本格的な操作が行われた事例の一つとなる。玉石混交であるとも言われてきたミームコインプロジェクトの中に、実際に詐欺的なプロジェクトが存在していたことを明らかにする事例ともなるため、今後の推移を注視しよう。

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※価格は執筆時点でのレート換算(1ドル=154.38円)

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2017年の仮想通貨ブームの頃に興味を持ち、以降Web3分野の記事の執筆をし続けているライター。特にブロックチェーンゲームとNFTに熱中しており、日々新たなプロダクトのリサーチに勤しんでいる。自著『GameFiの教科書』。
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