部分的な資本提携や拠点の分散化の可能性は認める
暗号資産(仮想通貨)取引所「Binance(バイナンス)」の共同創業者「Changpeng Zhao(チャンポン・ジャオ:通称CZ)」氏は17日、「バイナンスは売却されない」とする発言を行い、同取引所売却の憶測を強く否定した。
当初、「バイナンスが第三者に売却される可能性がある」という噂がSNSを中心に急速に拡散したが、CZ氏本人がこれを否定したことで、一連の臆測は一旦落ち着いたようだ。そもそも、これほど巨大な取引所を買収できる主体は限られており、国家レベルのファンドなど限られた投資家しか想定できない。結果として「真偽があやしい情報が広まり、バイナンス側が公に否定する」という流れが生じた。
バイナンスは依然として世界最大級の仮想通貨取引所とされる。取引高のシェアは 4割前後に及ぶといわれ、さまざまな国・地域でライセンス取得を試みている。業績が好調な企業には税制やコンプライアンスの観点から厳しい監督が及ぶのは当然で、米国ではCFTCやSECへの対応、さらには司法省による調査も行われた。結果として罰金の支払いを含む和解に至り、世界的に強化される規制環境がバイナンスに集中しがちなデマや噂を助長している一面がある。
バイナンスは倒産寸前の取引所を買収してきた経緯があり、むしろ「強い事業者が弱体化した取引所を引き取る」動きのほうが現実的だろう。「売却しない」というCZ氏の主張は、業界最大手としてのビジネスを続けるうえでも合理的な姿勢だ。
CZ氏が言及した「一桁%の株式について投資を受け入れる可能性」は、全面的な売却とは異なる。戦略的パートナー企業や国家ファンドなどから出資を受ければ、バイナンス側は経営権を維持したまま資本や信用力を得ることができる。これは、バイナンスが新規事業や規制対応を拡充するうえで有利に働く。事業を完全に手放すわけではなく、あくまで少数株主として迎え入れる構図であり、同社の拡大路線に合致している。
バイナンスは取扱高・ユーザー数で引き続き首位を堅持しつつ、コンプライアンス強化とグローバル展開の両立を図っている。リチャード・テン氏がCEOに就任してからは、マネロン防止やKYCの徹底、不要部門の整理などを進めており、一部地域ではライセンス取得が難航する一方、他の地域では正式な登録を完了している。市場が拡大傾向にあるアジアや中東での存在感も高く、サービスを多角化することでさらなる成長を目指しているとみられる。
将来的には、部分的な資本提携や拠点の一層の分散化、CeFiとDeFi双方を取り込むハイブリッド戦略が大きな柱となる見通しだ。BNBチェーンを活用したDeFiサービス、NFTや証券トークン領域への参入など、複数の収益源を確保することで経営リスクの分散を図る公算が高いだろう。