アパレルブランド「PIZZA DAY(ピザデイ)」と栃木県那須塩原市が連携し、廃棄ウールとワインのぶどうを活用したサーキュラーエコノミー型プロジェクトが始まりました。地域資源を有効活用しながら、NFT(非代替性トークン)を活かした新しい購入体験にも挑戦。環境と経済の両立を目指すこの取り組みには、多様なプレイヤーの知見と情熱が集まっています。
那須塩原市とは?

栃木県北部に位置する那須塩原市は、豊かな自然と温泉地で知られ、農業や観光が盛んな地域です。一方で、少子高齢化や人口減少といった全国共通の課題にも直面しています。そうしたなかで、同市は「2050 Sustainable Vision 那須塩原 ~環境戦略実行宣言~」を掲げ、循環型社会の実現に向けた先進的な取り組みを進めています。
今回のプロジェクトは、市の環境戦略の一環として、地域産業と廃棄資源をつなげ、新しい経済活動のモデルを創出しようとする挑戦です。
PIZZA DAYとは?

PIZZA DAYは、「株式会社Spicelink(スパイスリンク)」(本社:愛知県名古屋市)が展開するウールを主素材としたライフウェアブランドです。日本有数の毛織物産地・尾州で生まれ、裁断くずや古着などを再資源化するなど、アパレル業界の環境負荷軽減をミッションに掲げています。
また、PIZZA DAYはWeb3やNFTなどのデジタル技術を活用し、体験とモノが連動する仕組みの設計にも積極的。今回のプロジェクトでは、資源循環の要となる仕組みづくりを主導しています。
「ウール × ワイン資源循環プロジェクト」とは?

このプロジェクトは、アパレルとワインという一見異なる産業をつなぎ、廃棄物を新たな資源に転換することで、地域循環型の経済モデルを実証しようという取り組みです。PIZZA DAY、那須塩原市、ぶどう農家「石井ぶどう」、毛織物大手の「ニッケグループ」などが連携し、以下の3つの資源循環を構築します。
- 廃棄ウール → 有機肥料(ラナリン) → ぶどう栽培
- ぶどうの搾りかす → 染料 → 染物製品(Tシャツ・タオルなど)
- 製品の循環セット販売 → NFTによる購入体験の拡張
地元の農業や繊維業を生かしたこのモデルは、環境負荷を抑えつつ、地域内での価値循環を実現する新しい形のビジネスとして注目されています。
どんな仕組み?

まず、PIZZA DAYとニッケグループが連携し、廃棄された羊毛を有機肥料「ラナリン」として再資源化。その肥料を那須塩原市のぶどう農家「石井ぶどう」が活用し、ワイン用のぶどうを育てます。
次に、ワイン製造時に出るぶどうの搾りかすを、ニッケグループ傘下の染色加工会社「艶金」の技術により、染料として再利用。その染料で染めたTシャツやタオルなどの製品が「のこり染」ブランドとして展開されます。
さらに、今年7月からは「ウール製品 × 染物 × NFT」の“循環セット”が販売開始予定。ワインの完成は来年夏とされ、購入者には「NFT形式のワイン引換券」が付与されます。NFTを通じて、ぶどうの成長やワイン完成までの過程を見守ることができ、「待つ楽しみ」も提供されるユニークな体験型の仕組みです。
今後の展開と期待
このプロジェクトは単なる一過性の企画ではなく、終了後も自立して続けられる経済活動として設計されています。行政は環境政策として支援する一方で、民間主導での採算性や継続性が重視されており、地域内での持続的な価値循環を目指しています。
また、このモデルは那須塩原市の特性に合わせて設計されていますが、他の地域資源や農産物への応用も可能です。NFTなどの技術を活用することで、生産や流通の過程を共有し、商品に関わる体験を広げる仕組みとしても展開が期待されています。
おわりに
「ウール × ワイン」の資源循環プロジェクトは、地域資源の有効活用と異分野の技術を組み合わせることで、循環型の経済モデルの実現を目指しています。また、NFTを活用した購入体験の仕組みも導入し、製品の流通と体験価値を組み合わせた新しい手法の実証に取り組んでいます。