宮城県気仙沼市で2025年10月、世界各地のソフトウェア開発者が約2週間滞在し、地域課題に取り組む「気仙沼ハッカツオン」が開催されます。AIやWeb3、ブロックチェーンなど先端技術を駆使する約10名が、自治体や市民と協働し実用的な解決策の開発を目指します。
気仙沼市とは?

気仙沼市は宮城県の北東部、三陸海岸に位置する人口約5万4千人の港町です。リアス海岸の美しい景観と豊かな海の恵みで知られ、特にカツオやサンマ、フカヒレなどの水産業が盛んな地域として親しまれています。
2011年の東日本大震災で甚大な被害を受けましたが、全国から集まったボランティアを契機に移住した人々とも協力し、復興とその後のまちづくりを進めてきました。食を核とした持続可能なまちづくりが評価され、国内で初めて「スローシティ」に認証されています。
しかし現在、人口減少という課題に直面しており、その影響は宮城県内でも顕著となっています。こうした中で市は、デジタル技術の活用や海外技術者との関係構築を通じた新たなまちづくりの形を模索している状況です。
協力団体「ウィメンズアイ」とは?

今回のイベントでは、「特定非営利活動法人ウィメンズアイ」が協力団体として参画しています。ウィメンズアイは宮城県本吉郡南三陸町に拠点を置くNPO法人で、東日本大震災後の復興支援を契機として設立され、女性の視点から地域の課題解決に取り組んできました。
主な活動内容として、ひとり親家庭の生活実態調査や支援事業、子どもの居場所づくり事業「みらいと」の運営、女性の就労支援施設「大谷海岸オフィスミモザ」の立ち上げなどを手がけています。地域に根ざした調査・分析から具体的な施策提案まで、実践的なアプローチで社会課題の解決を目指している団体です。
その他の協力団体として、世界最大級のイーサリアム開発者会議「DEVCON(デブコン)」や「EDCON(エドコン)」など国際カンファレンスでレジデンシー運営を手がける「Kismet Casa(キスメット・カサ)」、地元の「気仙沼まち大学運営協議会」も連携しています。
「気仙沼ハッカツオン」とは?

このイベントは、滞在型レジデンシーとハッカソンを組み合わせた日本初の取り組みとして、2025年10月5日から17日まで13日間にわたって開催されます。AI、Web3、ブロックチェーン分野で活躍するソフトウェア開発者約10名が北米、南米、ヨーロッパ、アジアなど世界各地から気仙沼に集結し、地域の社会課題解決に挑戦します。
従来の短期間のハッカソンとは異なり、参加者が約2週間気仙沼に滞在することで、地域の実情を深く理解した上でソリューション開発に取り組むことが特徴です。気仙沼市職員や地元企業・団体との協働により、実用的な成果物の創出を目指しています。
イベントは3つのプログラムで構成されます。
- 滞在型レジデンシー(10月5日〜17日)
参加者が気仙沼に滞在しながら市民や地域の担い手と対話を重ね、解決すべき課題を特定します。実際に気仙沼の街を歩き、現場の声を聞くことで、地域のリアルな社会課題を感じ取ることができます。 - ハッカソン(10月10日〜12日)
短期間で集中的に開発を行い、プロトタイプを構築。自治体や企業・団体と連携しながら、AI、Web3、ブロックチェーンなどの技術を活用した実用的なソリューションの開発を進めます。 - レセプション(10月13日)
成果を市民や関係者に発表し、意見交換や国際的な対話の場を設けます。ハッカソン終了後も改善期間を設け、実装を視野に入れた継続的な開発が行われます。
参加には地域課題に本気で取り組む情熱と”カツオ愛”が条件とされており、単なる技術的な挑戦にとどまらず、気仙沼という地域への深い理解と愛着を持って参加することが求められています。
今後の展望と可能性
実行委員会では、このイベントを通じて関係人口やインバウンドの増加につながる成果の創出を期待しています。世界各地から集まった開発者が気仙沼に滞在し、地元と深く関わることで、継続的な関係性の構築も見込まれています。
また、本取り組みは地方における先端技術活用事例の一つとして位置づけられており、革新的な技術と地域の現場を直接結びつける新しいアプローチになるとしています。
おわりに
気仙沼ハッカツオンは、世界レベルの技術とローカルな知恵を融合させる新しい試みです。参加者が地域に深く根ざした視点で課題解決に取り組むことで、従来のハッカソンでは生まれにくい実用性の高いソリューションが期待されます。技術と地域が真の意味で結びついた時に生まれる可能性を、気仙沼から世界に向けて発信する機会となりそうです。