米財務省と内国歳入庁(IRS)は米国時間10日、暗号資産(仮想通貨)ETP(上場取引型金融商品)が、その税務上の地位を維持したままデジタル資産のステーキングを行うことを認める、新しいガイダンスを発表した。
信託の税制優遇を維持できるセーフハーバー規則を公表
スコット・ベセント米財務長官は10日、自身のXアカウントでこの新しいガイダンスの発表について投稿。「この動きは投資家の利益を高め、イノベーションを後押しし、米国がデジタル資産とブロックチェーン技術における世界のリーダーであり続けることを可能にするものだ」と、今回の規制明確化の意義を説明した。
今回発表されたセーフハーバー規則は、暗号資産ETPがステーキングを行う際の長年の課題であった税務上の不確実性を解消することを目的としている。そして米国で承認されている暗号資産現物ETF(ETFはETPの一種)の多くは、法的には「投資信託(Investment Trust)」または「グランター信託(Grantor Trust)」として分類されている。
これらの信託は、税法上、資産を「保有」するだけの「器」と見なされることで、信託自体への課税が免除され、利益を直接投資家に分配できる仕組みとなっている。
しかし、イーサリアムのような「Proof-of-Stake(プルーフ・オブ・ステーク/PoS)」を採用する暗号資産は、ネットワークのセキュリティ維持に貢献する対価として「ステーキング報酬」を生み出す。ETPがこのステーキング活動を行うと、単なる「保有」を超えた積極的な「事業活動」と見なされ、信託としての税務上の地位を失い、法人税が課されるリスクがあったのだ。
IRSは歳入規則の中で、セーフハーバーが適用されるための厳格な条件を複数提示している。主な条件は以下の通りである。
- SEC(米証券取引委員会)の規則遵守:ETPの持分は国内証券取引所に上場され、SECの規制および開示要件に準拠している必要がある。
- 単一資産の保有:信託は、単一種類のデジタル資産(と現金)のみを保有すること。
- カストディアンによる管理:デジタル資産はカストディアン(保管業者)によって管理されること。
- 裁量的な投資の禁止:信託の活動は、資産の保全(ステーキングによるネットワークセキュリティへの貢献を含む)や報酬の分配などに限定される。
- 報酬の分配:ステーキングによって得られた報酬は、信託が保有するのと同じデジタル資産の形で受け取られ、少なくとも四半期に一度、投資家に分配されなければならない。
今回のガイダンスは、米国市場においてイーサリアムやその他のPoS資産の現物ETFが、ステーキング報酬を投資家に還元する道筋を明確にしたものであり、今後の暗号資産ETP市場の発展に大きな影響を与えると見られる。
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