千葉工業大学で2025年7月10日、学生らが暗号資産(仮想通貨)を使って実際の商品を購入する実証実験が行われました。システムの設計・運用は「株式会社DOU(ドウ)」が担当し、マイナンバーカードをかざして仮想通貨で決済する仕組みを通じて、教育とブロックチェーン技術の新しい形を模索しました。
千葉工業大学とは?

千葉県習志野市にある千葉工業大学は、工学・情報系を中心とする私立大学です。AIやブロックチェーンなど、先端技術を活用した教育にも積極的に取り組んでいます。
技術系人材の育成に力を入れる中で、「web3・AI概論」などの授業を開講し、ブロックチェーン技術を活用した実証実験にも取り組んでいます。こうした実践的な取り組みを通じて、学生が技術の活用方法を体験的に学べる環境が整えられています。
株式会社DOUとは?

株式会社DOUは、2018年に設立された東京都渋谷区の企業です。キャリアパスポートやデジタル証明書の発行支援を通じて、教育機関やNPOなどと連携し、学生や若者のキャリア形成を支援しています。
また、ブロックチェーン技術を活用した学習記録の証明や貢献評価システムの構築にも取り組んでおり、教育現場での実装を進めています。
授業成果を活用した新しい実証実験

この実証実験は、2025年7月10日に千葉工業大学で開催された成果発表イベント「ChibaTech Expo 2025」にあわせて行われました。
対象は、授業「web3・AI概論」を受講した学生・社会人240名。課題提出や発表などの学習活動に応じて配布された仮想通貨「cJPY」を使って、学食のディナーチケットや授業オリジナルグッズの購入を体験しました。
システムの開発・運用は株式会社DOUが担当。「cJPY」は、学習への取り組みに対する報酬として設計されたデジタルトークンで、Ethereum(イーサリアム)のレイヤー2ネットワーク「Optimism(オプティミズム)」上で発行・管理されています。換金や投機的な取引はできず、教育現場で安心して活用できる設計です。
決済には、「マイナウォレット株式会社」の技術が活用されました。学生はマイナンバーカードを専用端末にかざすだけで決済が完了。ウォレットアプリの操作や秘密鍵の管理は不要で、本人確認と仮想通貨決済をシームレスに実現しました。
今後の展開と期待
今回の実証実験では、学習活動に経済的インセンティブを組み合わせることで、新しい学習体験の可能性が示されました。千葉工業大学では、この成果をもとに、他授業でのcJPY活用や対象者の拡大も検討されています。
さらに、この仕組みは、ブロックチェーン技術を活用して学びや社会貢献をデジタルトークンとして評価するものであり、教育分野を超えた応用も視野に入れられています。たとえば、地域ボランティア活動や企業内の貢献評価制度などでも、応用の可能性があります。
おわりに
千葉工業大学とDOUが取り組んだ今回の実証実験は、教育分野におけるブロックチェーン活用の新たな事例となりました。既存の社会インフラを応用し、学習成果を実際に活用できる体験として提供することで、教育とテクノロジーを結びつける実用的なアプローチを示しています。今後の展開や、他分野への応用にも期待が寄せられます。