DeFi(分散型金融)の世界で急速に存在感を増しているエセナが発行する新しいステーブルコイン「USDe(ユーエスディーイー)」。米ドルとの価格連動を目指しながらも、USDTやUSDCなどの米ドル連動型ステーブルコインとは異なる仕組みを持っています。また、ステーブルコインとしては比較的高い利回りを提供していることも大きな特徴です。
そこでこの記事では、USDeの基本的な仕組みから、高い利回りを生み出すメカニズム、内在するリスクとそれに対する緩和策、そして具体的な始め方まで、詳しく解説します。
USDeとは?5つのポイントでわかる基本
名称 | Ethena USDe(USDe) |
ティッカーシンボル | USDE |
発行・開発元 | Ethena Labs |
種類 | 合成ドル・ステーブルコイン |
リリース日時 | 2024年2月 |
価格 | 1 USDe ≒ 1米ドル |
時価総額 | 約1.91兆円(2025年10月14日時点) |
時価総額ランキング | 13位(2025年10月14日時点) |
ブロックチェーン | Ethereum(メイン)、他L2など23以上 |
公式サイト | https://ethena.fi/ |
USDeは、2024年に誕生した比較的新しいステーブルコインですが、2025年10月時点で暗号資産(仮想通貨)時価総額ランキング13位、ステーブルコインとしてはUSDTとUSDCに次ぐ第3位となっています。
USDeの発行企業であるエセナは、ドラゴンフライ・キャピタルやバイナンス・ラボといった業界トップクラスの投資家から支援を受けています。USDeは、カーブやユニスワップなどの主要なDEX(分散型取引所)、そしてバイビットやバイナンスといった大手CEX(中央集権型取引所)で広く採用されるなど、そのエコシステムを急速に拡大させています。
以下、そんなUSDeの特徴について解説します。
Ethena Labsによって開発された「利回り付きデジタルドル」
USDeは、2023年にガイ・ヤング氏によって設立された「Ethena Labs(エセナ・ラボ)」というチームによって開発・運営されています。彼らは、従来の金融システムから独立し、「暗号資産ネイティブでスケーラブルな通貨ソリューションを構築する」というビジョンを掲げています。
そしてUSDeは、彼らの手によって、誰もがアクセスできる「利回り付きデジタルドル」として生み出されました。
新たな仕組みで価格の安定性を実現する「合成ドルステーブルコイン」
USDeの最大の特徴は、その価格安定メカニズムにあります。一般的に、USDCのようなステーブルコインは、銀行に預けられた米ドルやなどの法定通貨および国債などを1対1の担保とすることで価格を安定させています。
一方、USDeの価格安定メカニズムは、法定通貨を一切使用していません。
代わりに、イーサリアム(ETH)やビットコイン(BTC)などの暗号資産を担保とし、それと同額のデリバティブ(無期限先物)のショート(空売り)ポジションを組み合わせることで価格の安定性を実現しています。この革新的な仕組みから、USDeは「合成ドル」と呼ばれています。
ステーブルコインなのに高い利回りが得られる
通常、ステーブルコイン自体は利回りを生みませんが、USDeは保有者がプロトコルにステーキングすることで高い利回りを得られる設計になっています。
エセナ公式プロトコルのほか、暗号資産取引所でのステーキングなど、USDeの利回りを獲得する方法は複数ありますが、その多くで年率5.5%以上(2025年10月時点)という高い利回りになっています。さらに取引所の独自キャンペーンなどで、10%を上回ることもあります。
この利回りは、他のステーブルコインをレンディング(貸し出し)サービスで運用する場合や、一般的なDeFiプロトコルの利回りと比較しても、高い水準です。
ステーブルコインとしての「安定性」に加えて、この「高利回り」こそが、USDeの最大の魅力となっています。
エセナ公式サイトでステーキングするとエアドロップがある
エセナは、過去4回のシーズンに分けて、プロトコル利用者に対してガバナンストークン「ENA」をエアドロップしています。そして過去のシーズンでは公式サイトでのUSDeのステーキングがエアドロップ獲得条件の一つとなっていました。
ステーキング利回りに加えて、ENAのエアドロップが期待できるという点も、USDeの特徴です。
2025年10月時点ではエアドロップイベントは開催されていませんが、「シーズン5」の開催が予告されています。今後発表される詳細情報を必ずチェックしましょう。
過剰担保を必要としない高い資本効率
暗号資産担保型のステーブルコインは、担保資産の価格変動リスクに備えるため、発行したいステーブルコインの価値の150%以上といった「過剰な」担保を必要とします。これは、資金効率の面で大きな課題となっていました。
しかし、USDeは後述する「デルタニュートラル戦略」によって担保資産の価格変動リスクをヘッジしているため、原則として過剰担保を必要としません。理論上、100%の担保で発行が可能であり、これにより非常に高い資本効率を実現しています。
USDeの仕組みを徹底解説!なぜ高い利回りが実現できるのか?
USDeの核心は、一見すると相反する「価格の安定性」と「高い利回り」をどのように両立させているかにあります。ここでは、その専門的なメカニズムを分かりやすく解説します。
価格を安定させる「デルタニュートラル戦略」
USDeの価格を1ドルにペッグ(連動)させる仕組みが「デルタニュートラル戦略」です。
具体的には、エセナはユーザーから預かった担保資産(例:1 ETH)の現物(ロングポジション)を保有すると同時に、デリバティブ取引所で同価値の無期限先物のショートポジションを建てるという戦略です。
- ETH価格が上昇した場合:現物(ロング)の価値は上がりますが、先物(ショート)の価値は同程度下がります。
- ETH価格が下落した場合:現物(ロング)の価値は下がりますが、先物(ショート)の価値は同程度上がります。
このように、片方の利益がもう片方の損失を相殺するため、担保資産全体の米ドル価値はETHの価格変動に関わらず、ほぼ一定に保たれるのです。
利回りを生む収益源:ステーキング報酬とファンディングレート
USDeの高い利回りは、主に2つの異なる収益源から生み出されています。
- ステーキング報酬
担保資産の一部として、Lido(リド)のstETH(ステーキングイーサ)のようなリキッドステーキングトークン(LST)が利用されます。これらの資産は、イーサリアムネットワークのプルーフ・オブ・ステーク(PoS)の仕組みから、安定したステーキング報酬(年率3%程度)を生み出します。 - ファンディングレート(資金調達率)
利回りの主要な源泉はこちらです。デリバティブ市場の無期限先物取引では、先物価格と現物価格の乖離を防ぐために、数時間ごとに「ファンディングレート(資金調達率)」と呼ばれる手数料の受け渡しが行われます。
歴史的に、暗号資産市場では価格上昇を見込んだロング(買い)ポジションの需要が高いため、ファンディングレートはプラスになる傾向があります。そしてこれは、ロングポジションのトレーダーがショートポジションのトレーダーに手数料を支払うことを意味します。
エセナは価格ヘッジのためにショートポジションを保有しているため、この手数料を継続的に受け取ることができるのです。
これらの収益源から得た収益が利用者に分配されることで、USDeはステーブルコインとしては珍しいほどの「高利回り」を実現しています。
知っておくべきUSDeの4つのリスクと緩和策
USDeは現時点では順調に急成長しており、成功を収めているように見えます。しかし、これまでにない特殊な仕組みとなっていることから、USDe特有のリスクも存在します。
あらゆる暗号資産・ステーブルコインがそうであるように、USDeにも投資にあたって注意すべき点や知っておくべき点があります。USDeに投資する前に、その特有のリスクと、エセナが講じている緩和策を正しく理解しておきましょう。
マイナス金利リスク(緩和策:リザーブファンド)
USDeの利回りの主要な源泉であるファンディングレートは、常にプラスであるとは限りません。市場が弱気相場に転じ、ショートポジションの需要が高まると、ファンディングレートがマイナスになることがあります。この状況が長期間続くと、エセナは手数料を受け取るのではなく、支払う側になり、プロトコルの収益性が損なわれ、元本が毀損する可能性があります。
エセナはこのリスクに備え、「リザーブファンド」と呼ばれる保険基金を設立しています。
これは、ファンディングレートがプラスの期間に得た収益の一部を積み立てたもので、マイナス金利が発生した際に損失を補填し、USDeの裏付け資産とsUSDe(USDeをステーキングした際に発行される利回り獲得トークン)保有者を保護する役割を果たします。
取引所のカウンターパーティリスク(緩和策:オフエクスチェンジ決済)
エセナは、デリバティブのショートポジションをバイナンスやバイビットといったCEXで構築しています。そのため、これらの取引所がハッキングされたり、経営破綻したりした場合、エセナの資産が失われるリスク(カウンターパーティリスク)が存在します。
このリスクを低減するため、エセナは「オフエクスチェンジ決済(OES)」という仕組みを採用しています。これは、担保資産を取引所のウォレットに直接預けるのではなく、信頼性の高い第三者のカストディアン(資産管理業者)に保管するものです。
資産はカストディアンの安全な口座で管理され、取引の証拠金としてのみ取引所に委任されるため、取引所固有の破綻リスクから隔離されます。
担保資産のデペッグリスク
エセナは担保資産として、ETHだけでなく、stETHのようなリキッドステーキングトークン(LST)も利用しています。これらのLSTは本来、ETHと1対1の価値を保つように設計されていますが、市場の極端な混乱時などにその価格がETHから大きく乖離(デペッグ)するリスクがあります。
担保の価値が想定外に下落した場合、デルタニュートラル戦略がうまく機能しなくなる可能性があります。
流動性リスクとUSDe自体のデペッグリスク
これまで挙げたリスクが複合的に発生した場合や、市場全体が極度のパニックに陥った場合、USDe保有者が一斉に償還や売却を試みることで価格がデペッグする可能性があります。また、未知の要因によってUSDeがデペッグする可能性もあります。
このリスクを完全に排除することはできませんが、ステーブルコインと言えども「絶対に」価格が安定するわけではないことをしっかりと理解し、保有する資産の分散、預けるプロトコルの分散などによってユーザー自身がリスク管理をする必要があります。
なお、2025年10月には、バイナンスでUSDeがデペッグし、一時0.65ドルまで価格が下落しました。これがきっかけとなり暗号資産市場全体で暴落が発生しています。ただし、本件についてはUSDeの仕組みではなく、バイナンスの仕組みの問題であることが専門家の分析によって明らかになっています。
USDeの始め方・購入・ステーキング方法
USDeの仕組みとリスクを理解した上で、実際に始めてみたい方向けに、具体的な手順を解説します。
USDeを購入して、ステーキングしで利回りを獲得する方法として代表的なのは以下の手順です。
- 国内・海外仮想通貨取引所の口座を開設
- 海外取引所でUSDeを購入する
- ウォレットに送金する
- エセナ公式サイトにウォレットを接続してステーキングする
順番に詳しく解説します。
STEP1:仮想通貨取引所の口座開設
まず国内外の仮想通貨取引所の口座開設から進めます。
国内の仮想通貨取引所に関しては、初心者でも扱いやすくて人気の高い、以下の取引所の利用がおすすめです。
おすすめ国内仮想通貨取引所
- GMOコイン
GMOコインは、手数料の安さと取扱銘柄の豊富さで定評のある国内取引所です。特に仮想通貨の送金手数料が無料であるため、海外仮想通貨取引所やMetaMask(メタマスク)などへの送金におすすめです。 - コインチェック
コインチェックは国内でもトップクラスのユーザー数を持つ仮想通貨取引所です。仮想通貨の売買手数料が無料で、積立やレンディングなど豊富なサービスを提供しています。特にスマホアプリの操作性やデザインが高評価で、仮想通貨初心者におすすめの取引所です。 - ビットバンク
ビットバンクは、高いセキュリティと多様な取扱銘柄が魅力の国内仮想通貨取引所です。預かり資産の大半をコールドウォレットで管理し、マルチシグ対応など堅牢なセキュリティ体制を整えています。現物取引に加え、信用取引やレンディングサービスも提供しており、取引スタイルに応じた柔軟な運用が可能です。また、板取引に対応しており、スプレッドが狭く中上級者にも人気です。 - bitFlyer
bitFlyerは、国内最大級のビットコイン取引量を誇る国内取引所です。ビットコインが貯まるクレジットカードや、Vポイント(旧Tポイント)をビットコインに交換できるサービスが評判です。さらに、少額から仮想通貨を手数料無料で購入できる点も魅力です。
国内取引所は、トラベルルールの影響で海外取引所との送金が制限される場合があります。そんなときは、メタマスクなどのプライベートウォレットを経由すれば問題ありません。
2025年10月時点ではUSDeは国内取引所に上場されていないため、購入は海外取引所で行います。
海外取引所の多くでUSDeが取り扱われていますが、そのなかでも日本語対応しており、豪華キャンペーンも開催されている以下の取引所の利用を検討してみるのがおすすめです。
まだ仮想通貨取引所の口座を持っていない方は、上記の中から選んで口座開設をしておきましょう。
国内取引所から海外取引所に送金する方法も、各取引所をクリックしたリンク先で解説しているので参考にしてください。
STEP2:海外取引所でUSDeを購入
USDeを手に入れる方法はいくつかありますが、最も一般的なのは海外の取引所で購入する方法です。
例えばBybit(バイビット)でUSDeを購入する場合は、以下の手順となります。
- 国内取引所からバイビットに暗号資産(ETH、XRPなど)を送金
- 送金した暗号資産をバイビットでUSDTに交換する。(※USDeはUSDTもしくはUSDCとの取引ペアでのみ購入できるため)
- 現物取引画面で「USDE/USDT」を選択して購入する。(※USDEはUSDeのティッカーシンボル)
以上でUSDeの購入は完了です。
STEP3:ウォレットに送金する
次に、購入したUSDeを自身のウォレットに送金します。
USDEはメタマスクなど多くのウォレットに対応しています。
メタマスクのアカウント作成手順
- メタマスクアプリのダウンロード
- 新規ウォレット作成を選択する
- ウォレットのパスワード設定を行う
- シークレットフレーズのメモ・確認
なお、シークレットフレーズはウォレット復旧に必要な鍵になります。表示されたら忘れないようにメモ等に記録して大切に保管してください。
ウォレットを作成したら、次は取引所からUSDeを送金します。バイビットの場合は、「資産」→「出金」と選択しましょう。

通貨は「USDE」を選択し、ウォレットアドレスは自身のウォレットからコピー&ペーストをして貼り付けしましょう。チェーンタイプは「Ethereum(ERC20)」を選択します。
出金額を入力して「確定」ボタンを押せば、ウォレットへの送金は完了です。
STEP4:エセナ公式サイトでUSDeをステーキングする
ウォレットへの送金を確認したら、次にエセナ公式サイトにアクセスしましょう。
アクセス後は自動的にウォレット接続画面が表示されるので、パスワードを入力して接続を完了します。
その後は以下の手順でステーキングを実行できます。

- 画面上部の「Earn」をクリックしてステーキングページを開く
- 右下の「Stake」欄に、ステーキングするUSDeの量を入力
- 獲得する「sUSDe」の量を確認し、「Stake」ボタンを押す。
※sUSDe(ステーキングUSDe)は、ステーキングした数量を証明するトークン。
なお、ステーキングの解除は7日間経過したあとから可能になります。
ステーキングによって獲得したUSDeの金額は「Earnings」欄からいつでも確認可能です。