- マイケルセイラー氏はストラテジー(旧マイクロストラテジー)の共同創設者・会長、企業として世界最大級のビットコイン保有を主導
- 企業がビットコインを財務資産として保有する戦略の先駆者、資本市場に新たな企業財務の潮流を形成
- 仮想通貨市場にも強い影響を与える「ビットコイン伝道師」
マイケル・セイラーとは?
マイケル・J・セイラーは米国の起業家です。上場企業「Strategy(ストラテジー/旧マイクロストラテジー)」の共同創設者であり、現在は同社の取締役会長を務めています。
セイラー氏は、企業資産をビットコインで保有するという独自の戦略、いわゆる「ビットコイン・トレジャリー企業」モデルを世界に先駆けて確立した人物です。この戦略によって、彼とストラテジーは仮想通貨市場全体に強い影響力を持つ存在となりました。
「ビットコインこそが最高の金融資産」という信念を一貫して掲げており、その揺るぎない信念から「ビットコイン・マキシマリスト(最大主義者)」の代表格としても知られる人物です。
マイケル・セイラーの経歴
マイケル・セイラー(Michael J. Saylor)は1965年、アメリカ・ネブラスカ州リンカーン生まれ。
MIT(マサチューセッツ工科大学)で航空学と科学史を専攻し卒業後、1989年にサンジュ・バンサル氏らとともにMicroStrategy(現Strategy)を共同創業しました。企業向けデータ分析ソフトの提供で急成長し、ドットコム期には株価の高騰によって億万長者となりました。
しかし、2000年に危機が訪れます。同社が収益を過大計上していたことがSEC(米証券取引委員会)の調査で発覚し、株価は暴落。セイラー氏を含む経営陣は、罰金と不正利益の返還あわせて約860万ドル(当時のレートで約9億円相当)を支払い、SECと和解しました。
その後、セイラー氏は事業を立て直し、2020年には「会社資産でビットコインを長期保有する」という大胆な戦略を打ち出します。この方針転換をきっかけに、同社とセイラー氏は再び注目を集め、株価も急上昇しました。
ビットコイン戦略による株価の上昇は、セイラー氏の個人資産にも大きく影響し、現在の保有資産は約73億7,000万ドル(約1兆円)に拡大。2025年9月にはブルームバーグ億万長者指数で世界491位にランクインしています。
なぜセイラー氏率いるストラテジーはビットコインを買い続けるのか?
マイケル・セイラー氏が率いるストラテジーは、2025年11月時点で641,692 BTC(約691億ドル、約10.6兆円相当)を保有しています。これはビットコインの総供給量(2,100万枚)の約3%にあたり、企業として世界最大の保有量を誇ります。
総取得コストは約475.4億ドル(約7.3兆円)、平均取得単価は約74,000ドル(約1,130万円)で、現在の市場価格との差から巨額の含み益が生じています。
この戦略の根底にあるのは、インフレで法定通貨の価値が目減りする中でも、資産の価値を「守る」だけでなく「増やす」という発想です。
セイラー氏は2020年、「現金は時間とともに価値を失う」として、現金や社債の代わりにビットコインを企業の準備資産に組み込みました。当時のインタビューでも、ビットコインを「インフレに強く、長期的に価値を保てる資産」と語っており、こうした考えが現在の戦略の核となっています。
当初は財務リスクを懸念する声もありましたが、ストラテジーは方針を貫き、会社の余剰資金だけでなく、株式や社債で調達した資金までもビットコイン購入に充てる積極的な戦略を進めました。
ストラテジーの投資戦略「セイラーサイクル」
ストラテジーの投資戦略は極めてシンプルです。株式や社債で資金を調達し、それをビットコイン購入に充てます。調達と購入を繰り返すことで保有量を増やし、長期的な運用を続けています。
この手法は「セイラーサイクル」とも呼ばれ、ビットコインの長期的な価格上昇を前提に段階的に買い増しを重ねるという、同社の基本的な投資戦略です。
伝統的な企業がリスク分散を重視するなかで、ストラテジーはビットコイン一点集中を貫いています。ここにセイラー氏の強い信念が表れているといえるでしょう。
ビットコイン価格の上昇とともに同社の株価は急騰し、一時は45倍を記録。2025年11月現在も約20倍の水準を維持しています。同社は「企業型ビットコインETF」とも呼ばれ、ビットコイン強気派の投資家から熱狂的な支持を集めています。
また、2024年には社名をMicroStrategyからStrategyに変更し、ビットコイン戦略を中心とする企業としての方向性をより明確に打ち出しました。

マイケル・セイラーがビットコインを支持する理由
マイケル・セイラー氏は、自身が率いるストラテジー社でビットコインを積極的に購入するだけでなく、個人でも17,732 BTCを保有していることを公表しています(2020年10月時点)。
個人としても多額のビットコインを保有しているその姿勢からは、もはや投資戦略を超えた「信仰」に近いものが感じられます。
なぜ彼は、ここまでビットコインに賭けるのでしょうか?
ビットコインが「最高の金融資産」
マイケル・セイラー氏の信念の根底にあるのは、「ビットコインこそが世界で最も優れた金融資産である」という揺るぎない確信です。彼は長年にわたり、インフレによる通貨価値の低下を警告し、ビットコインだけがそれに対抗できる唯一の手段だと語ってきました。
複数のインタビューで「ビットコインは金(ゴールド)や株式を超える世界最大の資産になる」と述べており、この信念こそが同社の大胆な投資戦略の原動力となっています。
セイラー氏がビットコインを信じる3つの理由
彼がビットコインを“究極の資産”と位置づける理由は、次の3点に集約されます。
- 究極の希少性
発行上限は2,100万枚と決まっており、誰もそのルールを変えることはできない。 - 価値の保存性
分割や送金が容易で、検証も確実。金を凌駕するデジタル時代の価値貯蔵手段として機能する。 - プログラム可能な資本
ブロックチェーン技術により透明性が高く、改ざんができない構造を持つため、国境を越えた取引を安全に実現できる。
セイラー氏が「ビットコイン伝道師」と呼ばれる理由
セイラー氏は、ビットコインを単なる資産や投機対象とは捉えていません。
その発言は経営者・投資家の視点を超え、思想家の域に達していると評されるほどです。
セイラー氏の代表的な発言
- (ビットコインは)人類史上初めての「発行者が存在しない通貨」
- 一般の人にこれ以上の富をもたらす資産は(ビットコイン以外に)ない
- ビットコインが究極のリスクオフ資産だ
- ビットコインは人類史上もっとも効率的なエネルギーネットワーク
- ビットコインはすべての価値保存問題の解決策
- 科学的に検討した結果、ビットコインが最善のインフレヘッジだと結論づけた
こうしたメッセージをX(旧Twitter)で発信し続ける姿勢から、いつしかセイラー氏は「ビットコイン伝道師」とも呼ばれるようになりました。
セイラー氏の発言が企業と市場に与える影響
セイラー氏率いるストラテジーは、他企業の財務戦略にも大きな影響を与えました。
2020年に同社がビットコイン投資を開始して以降、企業によるビットコイン保有は世界規模で急速に拡大。現在、ビットコインを保有する企業・団体は354に達し、上場企業だけで105万6,071 BTCを保有しています。そのうち約61%をストラテジーが占めており、その存在感は圧倒的です。
国別にみても企業による保有は加速しています。
- アメリカ:123社
- カナダ:43社
- イギリス:23社
- 日本:15社
- 香港:13社
出典:bitcointreasuries.net
こうした流れからも、「企業がビットコインを保有する」という選択肢は特例ではなく、ひとつの投資戦略として確立されつつあるといえるでしょう。
またセイラー氏自身の発信力も大きく、Xのフォロワーは460万人以上。テレビやYouTube、ポッドキャストなど多くのメディアを通じて、ビットコインの価値を伝え続けています。
さらに2025年にはホワイトハウス主催のデジタル資産サミットへ招待されるなど、政策レベルの議論にも関わるキーパーソンです。
セイラー氏のビットコイン価格予想
セイラー氏のビットコインへの確信は、強気な価格予想にも表れています。
彼は複数のインタビューや講演で、ビットコインを「長期的に指数関数的な上昇を続ける資産」として位置づけています。
セイラー氏のビットコイン価格見通し
- 10年以内(2030年代前半):100万ドル
- 2045年:1,300万ドル
- 2046年:2,100万ドル
2046年の「2,100万ドル」という数字は、ビットコインの総供給上限2,100万枚に加え、21年後という時間軸も重ねたセイラー氏らしい象徴的なメッセージです。
これらの価格予想は、「ビットコインの価値は永続的に伸び続ける」という彼の確信を体現したものです。単なる強気相場の見立てではなく、ビットコインの社会的・経済的役割そのものを見つめて導き出された数値なのです。
マイケル・セイラーに関するよくある質問(Q&A)
はい。マイクロストラテジー(現:Strategy Inc.)はマイケル・セイラー氏が創設した会社です。
セイラー氏は共同創業者であり、現在はエグゼクティブ・チェアマン(会長)を務めています。1989年から2022年まではCEOを務めていました。
株式会社メタプラネット(Metaplanet Inc)とマイケル・セイラー氏に資本関係や業務提携はありません。
ただしメタプラネットは、ストラテジーと同様にビットコインを財務戦略の中核に据えており、その戦略モデルが類似していることから「日本版(マイクロ)ストラテジー」とも呼ばれています。
セイラー氏はXで、メタプラネットのビットコイン購入や株価の動向をたびたび称賛しており、「メタプラネットをフォローしたほうがいい」と投稿したこともあります。また、メタプラネットの株主総会にビデオメッセージを寄せたこともあります。
セイラー氏の価格予想には幅があります。これは、短期・中期の現実的な見通しと、ビットコインの可能性を象徴的に伝える超長期のメッセージを使い分けているためです。
たとえば、2025年のFinancial Timesのインタビューでは、投資判断として実用的な目線から「10年以内に1 BTC=100万ドル」という見通しを語りました。
一方、同年のBTCプラハカンファレンスでは、ビットコインの社会的意義と長期的ポテンシャルを強調し、 「2046年には1 BTC=2,100万ドル」という超強気のシナリオを示しました。
表現の違いはあれど、いずれの発言も根底には「ビットコインの価値は長期的に上昇し続ける」という一貫した確信があります。セイラー氏の価格予想は、価格を当てることが目的なのではなく、ビットコインの本質的価値と可能性に目を向けさせるための入り口として発せられているのではないでしょうか。
いいえ、セイラー氏はビットコイン以外の仮想通貨を一切購入していません。また、ストラテジーもビットコイン以外の仮想通貨を保有・購入していません。これは公式開示と本人の発言からも明らかです。
セイラー氏はビットコインを「唯一の健全な通貨(sound money)」「完成されたデジタル資本」と位置づけています。一方で、イーサリアム(ETH)やソラナ(SOL)などのアルトコインについては、規制リスク・中央集権性・設計の不安定さを理由に批判的です。
ただし、アルトコイン投資そのものを全否定しているわけではなく、ハイリスク・ハイリターン戦略としてベンチャーキャピタル(VC)に適した投資対象にはなり得るとも述べています。
とはいえ、彼自身とストラテジーの戦略は一貫して「ビットコインのみ」です。
あります。セイラー氏とストラテジーのビットコイン偏重戦略には、複数の批判が向けられています。
まず、同社の株価がビットコインの価格と強く連動するため、企業価値が本業の実態よりも仮想通貨市場の変動に左右されやすいという点です。
また、過去に会計処理を巡ってSECと和解した経緯があることから、現在の「ビットコイン全振り」戦略は財務リスク管理を軽視しているとの批判もあります。
さらに、イーサリアム共同創設者ヴィタリック・ブテリン氏から批判を受けたこともあります。セイラー氏が「自己管理よりもブラックロックやフィデリティのような大手カストディに預けるほうが安全で有利」と述べたことに対し、「分散と自己主権を重視する仮想通貨の理念に反する」と指摘されました。
セイラー氏は、テクノロジーと教育の融合を掲げる社会派実業家としての一面も持っています。特に教育支援に力を入れており、無料オンライン学習プラットフォーム「Saylor Academy」を運営。誰でも無償で学べる環境づくりを通じて、社会貢献にも積極的に取り組んでいます。
はい、本当です。2024年12月27日のFOX Businessのインタビューで、セイラー氏は「自身のビットコインの秘密鍵を死後に破棄するつもりだ」と発言し、大きな話題となりました。理由について 「世界中のビットコイン保有者への貢献になる」と語っています。
なお、破棄の対象はセイラー氏個人が所有するビットコインの秘密鍵のみであり、ストラテジーが保有する約65万BTCは含まれません。ただし、個人保有分も2020年10月時点で17,732 BTCと非常に大きな規模です。
マイケル・セイラー氏は独身で、子どももいません。プライバシーを重視しており、家族や私生活について公に語ることはほとんどありません。
2024年10月20日、Madison Malone氏のインタビューでは、自身の資産観と人生観を重ね、次のように語っています。
私は独身で子どももいません。だから、私がいなくなれば、それで終わりです。サトシ(ナカモト)が100万BTCを世界に残したように、私も自分の持っているものを文明に残すつもりです。



