メタプラネットは、ビットコインを財務戦略の中心に据えている日本の上場企業です。
2024年4月にビットコイン保有戦略を発表して以降、株価の急騰と急落があり、投資家の注目を集めています。
本記事では、メタプラネットのビットコイン戦略や株価推移、そして将来性や投資リスクについて、徹底的に解説します。
- メタプラネットは日本のビットコイントレジャリー企業で、30,823 BTCを保有している(2025年11月26日時点)。
- 企業価値の大部分がビットコイン保有分で構成されているため、株価はビットコイン価格と強く連動する。
- 新株予約権の発行による株式希薄化のリスクがある一方、ビットコインの長期的な価格上昇の期待により将来的な成長が注目されている。
メタプラネットの基本情報
| 企業名 | 株式会社メタプラネット(Metaplanet Inc.) |
| 証券コード | 3350 |
| 上場市場 | 東京証券取引所スタンダード市場 |
| 株価 | 369円(2025年11月26日時点) |
| 代表取締役社長CEO | サイモン・ゲロヴィッチ |
| 設立年月 | 1999年6月 |
| 本社所在地 | 東京都港区 |
| 主な事業内容 | ビットコイン・トレジャリー・オペレーション、Bitcoin Magazine Japan運営、ホテル事業 |
メタプラネットは、ビットコインを長期的な価値保存手段として捉え、財務の中核に据える「ビットコイントレジャリー戦略」を採用しています。
これまでの総購入額は約4,898億7,000万円(平均取得価格は1 BTCあたり15,893,013円)。30,823 BTCを保有しており、現在のビットコイン評価額は約4,106億円(2025年11月26日時点)です。
この大規模なビットコインの保有により、メタプラネットは日本市場において独自のポジションを確立しています。
ホテル事業も展開していますが、現在の企業価値を左右しているのは主にビットコインの評価額です。
メタプラネットのビットコイン戦略
メタプラネットは、ビットコインの保有量を継続的に増やしており、その戦略は米国のストラテジー社(旧マイクロストラテジー)と類似しています。
ここでは、メタプラネットのビットコイン戦略について解説します。
ストラテジー社と類似した戦略
ストラテジー社は2020年8月からビットコインの購入を開始し、現在では64万BTC以上を保有する世界最大のビットコイン保有企業です。
ストラテジー社の株価は、ビットコイン保有戦略の開始以降大きく上昇しており、ビットコイントレジャリー企業の成功事例として世界中の投資家から注目されています。
メタプラネットとストラテジー社の戦略には、以下のような類似点があります。
メタプラネットとストラテジーの類似点
- ビットコインが主要なポートフォリオ
- 資金調達を原資にビットコインを購入
- 長期保有の戦略を採用
- KPI(重要業績評価指標)が「1株あたりビットコイン保有量の最大化」
こうした共通点に加えて、メタプラネットには日本企業ならではの背景もあります。
メタプラネットが上記の戦略を採用する理由は、インフレのヘッジ、円安対策、そして企業価値の向上です。
ビットコインは発行上限が2,100万BTCと決まっているため希少性が高く、長期的には価値が上昇すると期待されています。日本円の価値が下落するインフレ局面において、資産価値を守るためにビットコインを保有することは効果的といえます。
また、円安が進行する環境下では、ドル建て資産であるビットコインを保有することで為替変動リスクを和らげる効果も期待できます。ビットコイン価格が上昇すれば、企業の保有資産の価値も増加し、結果として企業価値の向上にもつながります。
さらに、KPIを「1株あたりビットコイン保有量の最大化」に設定することで、企業がビットコイン保有の拡大に注力している姿勢を明確に示せます。
これにより、株主は企業の成長をビットコイン保有量の増加という、わかりやすい指標で評価できる点も戦略のひとつといえるでしょう。
メタプラネットのビットコイン保有量の推移
メタプラネットは、2024年4月22日に初めてビットコインを購入して以降、継続的に保有量を増やしています。以下が主要なビットコインの購入履歴です。
メタプラネットの主要なビットコイン購入履歴
- 2024年4月22日:97.85 BTC購入(初回)
- 2025年5月12日:1,241 BTC購入(初の4桁購入)
- 2025年7月7日 :2,205 BTC購入(大型購入)
- 2025年9月22日:5,419 BTC購入(大型購入)
- 2025年10月1日:5,268 BTC購入(最新)
- 累計:30,823 BTC
メタプラネットは「2025年末に30,000 BTCを保有する」という目標を掲げていましたが、2025年10月1日時点で30,823 BTCを保有しており、目標を達成しています。さらに同社は、「2026年末には100,000 BTCを保有する」という目標も設定しています。
メタプラネットの資金調達方法と株主への影響
メタプラネットは、ビットコイン購入のための資金を、主に以下の3つの方法で調達しています。
メタプラネットの主な資金調達方法
- 新株予約権(ワラント)の発行
- 普通社債の発行
- クレジットファシリティ(信用枠)の活用
新株予約権の発行は、株式数の増加により1株あたりの価値が希薄化する可能性があります。既存株主にとっては、持分比率が低下するリスクがあるため、注意が必要です。
ただし、ビットコインの価格が上昇した場合には、希薄化を上回る価値創造につながる可能性もあります。メタプラネットが購入したビットコインの価値が大きく上昇すれば、企業全体の価値も増加し、結果として1株あたりの価値が向上することも考えられます。
普通社債は、企業が投資家から資金を借り入れる形式の債券で、一定期間後に元本と利息を返済します。クレジットファシリティは、金融機関から事前に設定された信用枠内で資金を借り入れることができる仕組みです。
このように、メタプラネットの資金調達戦略は、株主にとってリスクとリターンの両面をもっています。投資家は、ビットコイン価格の動向とメタプラネットの資金調達の計画を注視したうえで、投資判断を行う必要があるでしょう。
メタプラネットの株価推移とビットコイン価格との関係
メタプラネットの株価は、ビットコイン価格の動向と密接に関係しており、大きく変動しています。ここでは、株価の推移とビットコイン価格との関係について詳しく解説します。
メタプラネットの株価推移
メタプラネットの株価は、ビットコイン保有戦略を発表した2024年4月以降、大きく変動しています。

メタプラネットの株価推移(2024年~2025年)
- 2024年4月:ビットコイン保有戦略の発表を受け、株価が上昇
- 2024年12月末:株価が大きく上昇
- 2025年6月:株価がピークに到達
- 2025年11月21日:357円
メタプラネットの株価は、2024年4月のビットコイン保有戦略の発表を受けて約2倍に上昇しました。
その後、7月には一時300円まで急騰したものの、すぐに急落しました。
本格的な上昇トレンドがみられたのは2024年10月下旬~11月頃からで、2025年6月には史上最高値となる1,930円を記録しています。
ピーク後は下落に転じ、2025年11月時点では300~400円台で推移しています。
ビットコイン価格との連動性
メタプラネットの株価は、ビットコイン価格と強く連動しています。
これは、同社の主要なポートフォリオがビットコインであり、ビットコイン価格の変動が企業価値に直接影響するためです。
同社は2025年11月26日時点で約4,106億円相当のビットコインを保有しており、ビットコイン価格が1%動くと保有資産は約41億円変動します。こうしたビットコイン中心の資産構造が、株価とビットコイン価格の強い連動性を生む要因となっています。

実際の値動きにも、この関係性が表れています。
特に、2024年11月頃から2025年6月にかけては、ビットコイン価格の上昇にあわせて株価も大きく上昇し、史上最高値となる1,930円を記録しました。この期間は、両者の連動がはっきりと確認できます。
また、投資家の多くがメタプラネット株を「ビットコイン関連株」として認識しており、ビットコインの動きが強い局面では、メタプラネット株への需要も高まる傾向があります。
このため、メタプラネットに投資する際は、ビットコイン市場の動向を注視する必要があります。
株価変動の要因
メタプラネットの株価が変動する要因は、ビットコイン価格だけではありません。株価が上昇する要因と下落する要因を解説します。
株価上昇の主な要因
- ビットコイン価格の上昇
- 市場の注目度の高まり
- ビットコイン投資への関心の高まり
- ストラテジー社の成功事例への期待
2024年4月のビットコイン保有戦略発表後、メディアでの露出が増えたことで投資家の関心が高まりました。
さらに、米国のストラテジー社が64万BTC以上を保有し、株価を大きく上昇させた成功事例があることから、メタプラネットにも同様の成長を期待する投資家が増え、株価上昇の一因になったと考えられます。
株価下落の主な要因
- ビットコイン価格の下落
- 新株予約権の発行による株式希薄化への懸念
- 規制リスクへの懸念
- 市場全体のリスクオフムード
特に、新株予約権の発行は既存株主の持分比率を低下させるため、発行が発表されると、一時的に株価が下落することがあります。また、暗号資産市場全体に対する規制強化の動きがあれば、メタプラネット株にも売り圧力がかかりやすくなる可能性があります。
メタプラネットの将来性とリスク
メタプラネットに投資する際には、将来性とリスクの両面を理解することが重要です。
メタプラネットの将来性
メタプラネットの将来性は、主にビットコインの長期的成長と日本市場でのポジションに支えられているでしょう。
ビットコインには以下のような特徴があり、長期的には価値が上昇すると期待されています。
- ビットコインの希少性
- 機関投資家の参入の増加
- ビットコインETFの承認
- 法定通貨としての採用
ビットコインは発行上限が2,100万BTCと決まっているため、供給量が限られています。
また、機関投資家の参入も加速しており、2025年時点では大手資産運用会社や年金基金がビットコインを投資対象として検討するケースが増えています。これらの動きが、ビットコインの長期的な価値上昇を支える要因となっているでしょう。
2024年には米国でビットコインETFが承認され、個人投資家が簡単にビットコインに投資できる環境が整いました。ビットコインETFの承認により、従来は暗号資産取引所での購入に抵抗があった投資家も、証券口座を通じてビットコインに投資できるようになり、市場への資金流入が加速しています。
また、エルサルバドルがビットコインを法定通貨として採用するなど、国家レベルでの採用事例も出てきています。
メタプラネットは日本のビットコイントレジャリー企業として、先行者利益を享受しています。
現時点の日本国内では、上場企業がビットコインを財務戦略の中心に据える事例が少ないため、メタプラネットは独自のポジションを確立しています。
今後、他の日本企業がビットコイン保有戦略を採用する可能性もあり、メタプラネットの成功事例が他社に影響を与える可能性も考えられます。また、ビットコインに関する最新情報や分析記事を提供するメディアであるBitcoin Magazine Japanの運営を通じて、日本国内でのビットコイン啓蒙活動も行っており、ブランド価値の向上にも注力しています。
メタプラネットに投資するリスク
メタプラネットに投資する際には、以下のようなリスクを理解しておく必要があります。
- ビットコインの価格変動
- 株式の希薄化
- 経営難
- 規制の強化
ビットコインの価格変動
ビットコインは価格変動が激しい資産です。
大きな価格変動はメタプラネットの企業価値にも直接影響するため、ビットコイン価格が長期的に下落した場合、メタプラネットの株価も大きく下落するリスクがあります。
株式の希薄化
メタプラネットがビットコインを購入するための資金を新株予約権の発行により調達している点もリスクの1つになり得るでしょう。新株予約権が行使されると株式数が増加し、既存株主の持分比率が低下します。
2025年には複数回にわたり新株予約権が発行されており、今後も継続的に発行される可能性があります。
経営難
別の既存事業が不振に陥った場合に企業全体の財務状況が悪化する可能性もあるため、経営難のリスクも考慮する必要があるでしょう。
規制の強化
ビットコインに関する規制が変更される可能性もあり、日本政府が暗号資産に対する規制を強化した場合、メタプラネットの事業に影響が出る可能性があります。
例えば、会計基準の変更により、ビットコインの評価方法が変わる可能性もあります。
ビットコインを時価評価する会計基準に変更された場合、ビットコイン価格の変動が直接的に損益計算書に反映されることになり、企業の業績が大きく変動する可能性があります。
現在はビットコインは無形資産として計上されていますが、将来的に評価方法が変更されれば、財務諸表に大きな影響を与える点も理解しておきましょう。
メタプラネット株とビットコイン投資の比較
メタプラネット株とビットコインへの直接的な投資における、それぞれのメリットとデメリットを比較します。
メタプラネット株に投資するメリット・デメリット
メリットは下記の通りです。
- 証券口座で売買が可能
- 暗号資産取引所の口座開設が不要
- NISA口座での投資が可能
- 将来的な配当や株主優待の可能性
メタプラネット株は、東京証券取引所スタンダード市場に上場しているため、証券口座を持っていれば簡単に売買が可能です。
暗号資産取引所の口座を開設する必要がないため、本人確認手続きや取引所のセキュリティリスクを避けたい投資家にとっては魅力的な選択肢でしょう。
また、NISA口座を利用すれば、売却益が非課税になるメリットもあります。特に、成長投資枠を利用することで年間240万円まで投資でき、売却益や配当が非課税となるため、長期投資を考えている投資家にとっては大きな税制メリットがあります。
ビットコインへの直接投資では、売却益が雑所得として課税されるため、NISA口座を活用できる点は大きな利点です。
対してデメリットは下記の通りです。
- 新株予約権の発行による株式希薄化
- ビットコイン価格の上昇を100%享受できない
- 取引時間の制限(証券取引所の営業時間のみ)
- 経営リスクの存在
メタプラネットは、ビットコイン以外にも事業を展開しているため、ビットコイン価格の上昇がそのまま株価の上昇につながるわけではありません。また、株式市場は証券取引所の営業時間内でしか取引できないため、ビットコイン市場のように24時間365日取引することはできません。
さらに、経営陣の判断により、ビットコインを売却する可能性も完全には否定できません。
現時点では長期保有戦略を採用していますが、将来的に方針が変更されるリスクもあるでしょう。
ビットコインに投資するメリット・デメリット
メリットは下記の通りです。
- ビットコイン価格の上昇を100%享受
- 自己管理(ノンカストディアルウォレット)が可能
- 24時間365日取引可能
- 世界中どこでも取引可能
ビットコインに直接投資することで、ビットコイン価格の上昇をそのまま享受できます。また、ノンカストディアルウォレットを使用することで、取引所のリスクを負わずに自分で管理することが可能です。
ビットコイン市場は24時間365日稼働しているため、週末や祝日でも取引できます。また、インターネット環境があれば世界中どこでも取引できるため、国境を越えた資産の移動も可能です。
デメリットは下記の通りです。
- 暗号資産取引所の口座開設が必要
- ハッキングや秘密鍵紛失のリスク
- 激しい価格変動
- 税金の計算が複雑(雑所得として課税)
ビットコインに投資するには、暗号資産取引所の口座開設が必要です。
口座開設において、本人確認手続きや取引所のポリシーを理解する必要があります。また、取引所がハッキングされるリスクやノンカストディアルウォレットの秘密鍵を紛失するリスクもあります。
税金面では、ビットコインの売買による利益は雑所得として課税され、所得が高い人ほど税率が高くなります。雑所得は総合課税の対象となり、最大で45%の所得税と10%の住民税が課税され、合計で55%の税率となる可能性があります。
また、複数の取引所で取引している場合、すべての取引履歴を記録したうえで損益を計算する必要があり、手間がかかる点も大きなデメリットになるでしょう。
メタプラネットに関するよくある質問(FAQ)
メタプラネットの株は、東京証券取引所スタンダード市場に上場しているため、証券口座を持っていれば購入できます。主要なネット証券会社や対面証券会社で取り扱っています。
投資家のタイプによって異なります。
暗号資産取引所の口座開設に抵抗がある方や、証券口座で簡単に取引したい方には、メタプラネット株が向いているでしょう。一方、ビットコイン価格の上昇を100%享受したい方や、24時間365日取引したい方には、ビットコインへの直接投資が向いています。
※本記事は投資推奨ではありません。自己責任で投資判断を行うことが重要です。
現時点では配当を実施していません。将来的には、企業の成長とともに配当が実施される可能性もありますが、現時点では未定です。
現時点で株主優待はありません。将来的に株主優待が導入される可能性もありますが、現時点では実施されていません。
メタプラネットは、基本的にはビットコインを売却しない方針と発表しています。長期保有戦略を採用しており、ビットコインを長期的な価値保存手段として活用する方針です。
ただし、経営判断や市場環境の変化により、将来的に売却する可能性は完全には否定できないでしょう。メタプラネットの公式情報やIR情報を定期的に確認することが重要です。



